研究課題/領域番号 |
25450199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
石田 清 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (10343790)
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研究分担者 |
織部 雄一朗 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (40370853)
高田 克彦 秋田県立大学, 付置研究所, 教授 (50264099)
野堀 嘉裕 山形大学, 農学部, 教授 (80237867)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 積雪 / 道管形成 / 開芽日 / 晩霜害 / 雪解け / 積算温度 / ミズナラ / ブナ |
研究概要 |
(1)春期の積雪による形成層の冷却がミズナラの道管形成時期を遅滞させているかどうかを検証するため、多雪地である八甲田連峰(青森県黒石市:標高650m地点;年最大積雪深280~320cm)において、除雪個体(幹周りを除雪した大径木5個体)と非除雪個体(大径木5個体、小径木5個体)の幹(地上高50cmと200cm)と1年枝の形成層・木部を定期的にサンプリングした。サンプリングした形成層・木部は樹脂包埋して切片を作成し、顕微鏡による観察に着手した。(2)さらに、開葉時期が早いブナについて、積雪が減少すると雪解けと開芽が早まり、晩霜害を被りやすくなるかどうかを検証するため、八甲田連峰の2地点(青森県十和田市:標高450m地点及び900m地点)において、雪解け時期とブナ当年生実生の開芽時期との関係を調べた。その結果、子葉開葉日までの地表積算温度(限界温度を0℃と仮定して日平均温度を積算した値)は約250℃・日であり、地点による有意な差違は認められなかった。また、2地点ともに雪解けが遅い場所ほど開葉が遅くなる傾向が認められた。1地点(標高450m地点)では、雪解けが遅い場所ほど秋までの生存率が低くなる傾向も認められた。(3)ブナについては、開芽日は晩霜害の発生リスクに影響する重要な要因と考えられる。そこで、八甲田連峰の12地点(標高450m~900m)でブナの開芽・落葉や雪解けの時期を記録するとともに、データロガーを設置して気温を測定し、ブナの開芽日と春期の気温との関係を分析した。その結果、標高や地形(盆地内に位置しているか否か)によってブナの開芽日を規定する温度条件が異なることが示された。盆地内の調査地を除外した場合、標高が高い地点ほど開芽に必要な積算温度(限界温度を3℃と仮定して日平均気温との差を積算した値)が高かった。一方、同じ標高ならば、盆地内の調査地のブナの方が他の場所の調査地よりも開葉が遅れる傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究は、予定していた調査計画どおりに進捗しており、今後2年間の研究期間内に問題無く成果を上げることができると期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ミズナラについて前年度から継続している分析作業(既に採取したサンプルの道管形成時期の特定)を続ける。また、新たに、八甲田1地点(青森県黒石市)および弘前市藤崎町(弘大藤崎農場)においてミズナラ調査木(1地点あたり3~5個体)を選定し、積雪環境・幹温度を測定するとともに、幹と当年枝から形成層を定期的にサンプリングする。これらのサンプルの形成層を観察し、道管形成に及ぼす積雪の影響を明らかにする。 (2)八甲田1地点(青森県黒石市)においてミズナラの幹と樹体上部(当年枝)で道管形成時期が異なることが判明した場合は、それらのタイムラグが展葉時期や葉形態に及ぼす影響を調べる。 (3)八甲田12地点におけるブナ成木・幼樹・実生の開芽・落葉期や雪解け時期の記録を続け、雪解け時期が開葉日に及ぼす影響を分析する。 (4)弘前市藤崎町と八甲田1地点(青森県・青森市)で春期にブナの摘葉を行い、同時に定期的にトレファーで形成層をサンプリングし、組織を顕微鏡で観察することにより、春期における葉の消失が木部形成と道管形成に及ぼす影響を調べる。また、晩霜害やブナハバチなどで春期の葉の消失が八甲田で実際に起こった場合は、その被害状況を写真撮影などで記録するとともに形成層のサンプリングと観察を行う。 (5)八甲田連峰内の盆地内にある1地点(青森県・田代平)において、より多くの早期開芽木と晩期開芽木について木部組織を観察し(サンプルは既に採取済み)、晩霜害が道管形成・肥大成長(標準年輪値)に及ぼす影響を推定する。木部形成に及ぼす降水量の影響についても予備的検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当概年度においてミズナラの木部・形成層のサンプリングを行ったが、樹脂包埋による切片作製・観察は次年度に繰り越すこととした。このため次年度において切片作製を行うため、当該助成金が生じた。 次年度において、ミズナラ木部・形成層の切片作製を行うために必要となる試薬・プラスチック・ガラス機器等の消耗品の購入にあてる。
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