研究概要 |
本年度の研究では、癌腫病菌カバノアナタケIO-U1株に感染した、3ヶ月生及び6ヶ月生シラカンバ幼植物体No.8に発現する、菌感染特異的ペルオキシダーゼの組織内分布を、酵素活性染色及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化ー飛行時間型質量分析法 (MALDI/TOF/MS) イメージング解析法を用いて検討した。 3ヶ月生のシラカンバ幼植物体を、3ヶ月間培養し、6ヶ月生の植物体を調製した。この植物体苗長の1/5の基部付近に傷を付け、ここにカバノアナタケIO-U1株の菌糸体を接種した (T)。対照として、無傷・無菌(C1)及び有傷(C2)の植物体も用意した。各処理後、植物体を2, 10, 30日間培養し、各植物体を収集して処理部を採取した。これに、ペルオキシダーゼ活性染色、またはフェノール性化合物呈色反応を施し、横断面切片を作成後、光学顕微鏡で観察した。3ヶ月生の幼植物体についても、C1, C2, Tを調製し(処理部は茎頂から3番目の節間)、2, 10, 30日間培養した。培養後、各植物体を収集して第3節間を採取した。これを液体窒素で凍結し、横断面切片を作成した。この切片を用いて、MALDI/TOF/MS及びイメージング解析 を行った。イメージングに使用したマススペクトルピークは、次の通りである。m/z 11000±1000, 10700±1000, 22000±1000, 22100±1000, 27000±1000, 27500±100, 32000±1000, 31900±100, 40000±1000, 40300±100, 60000±1000, 59900±100, 69600±100。 3ヶ月生の幼植物体の場合と比較して、6ヶ月生の植物体は、より発達した菌に対する防御応答(ペルオキシダーゼの発現、フェノール性化合物の堆積)を示すことが判明した。また、MALDI/TOF/MS イメージング解析の結果、菌感染特異的ペルオキシダーゼアイソザイムは、木部において全体的に分布していることが明らかとなった。
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