研究課題/領域番号 |
25450204
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
横田 信三 宇都宮大学, 農学部, 教授 (60210613)
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研究分担者 |
上高原 浩 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10293911)
吉永 新 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60273489)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シラカンバ / カバノアナタケ / ペルオキシダーゼ / MALDI/TOF/MSイメージング / 樹病 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、昨年度に引き続き、癌腫病菌カバノアナタケIO-U1株に感染した、3ヶ月生及び6ヶ月生シラカンバ幼植物体No.8に発現する、菌感染特異的ペルオキシダーゼの組織内分布を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化・飛行時間型質量分析法 (MALDI/TOF/MS)イメージング解析法を用いて検討した。3ヶ月生及び6ヶ月生のシラカンバ幼植物体を調製し、主茎に傷を付け、そこにカバノアナタケIO-U1株の菌糸体を接種した植物体 (T) を用意した。また、対照として、それぞれ無傷・無菌 (C1) 及び有傷 (C2) の植物体も用意した。各処理後、植物体を更に2、10、30日間培養した。各期間培養した植物体を収集し、処理部を採取した。採取試料を液体窒素で急速凍結し、横断面切片を作成した。得られた切片を用いて、昨年度、菌感染特異的ペルオキシダーゼのMALDI/TOF/MSにより得られたマススペクトルピークを基に、MALDI/TOF/MSイメージング解析を行った。昨年度と同様に、菌感染特異的ペルオキシダーゼに由来すると思われるシグナルは、3ヶ月生及び6ヶ月生両方において、木部全体に見られた。しかしながら、組織化学的染色によって観察された、菌感染特異的ペルオキシダーゼの局在は認められなかった。 本年度の研究においては、菌感染特異的に生成するフェノール性化合物のMALDI/TOF/MSイメージング解析も試みた。フェノール性化合物として、縮合型タンニンを候補化合物として推定しているが、切片の菌接種部位付近において、縮合型タンニン特有のMALDI/TOF/MSスペクトルを得ることが出来た。また、本年度では、細胞骨格タンパク質の一つである、アクチン繊維の蛍光試薬染色による顕微鏡観察を行った。その結果、T植物体から作成した横断面及び縦断面切片の両方において、菌接種部付近に、アクチン繊維の局在が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
菌感染特異的ペルオキシダーゼのMALDI/TOF/MSイメージング解析がうまく進展していない。得られるスペクトルシグナルにノイズが多く、明瞭なスペクトルピークがきちんと得られていない。また、微小管構成タンパク質の抽出も、前年度と同様に、きちんと進展していない。
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今後の研究の推進方策 |
菌感染特異的ペルオキシダーゼのMALDI/TOF/MSイメージング解析については、高分子量域のマススペクトルピークが検出し易いと考えられる、別のタイプのマトリックスを使用して実験を行う予定である。微小管構成タンパク質については、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いた観察も試みる。また、アクチン繊維の蛍光顕微鏡観察では、期待通りの結果が得られたので、アクチン繊維についてMALDI/TOF/MSイメージング解析を試みる予定である。更に、菌感染特異的フェノール性化合物として、縮合型タンニンと予想される化合物のMALDI/TOF/MSスペクトルが得られているので、縮合型タンニンを対象としたMALDI/TOF/MSイメージング解析を試みるつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究において、菌感染特異的ペルオキシダーゼのMALDI/TOF/MSイメージング解析が、なかなかうまく進展しなかった。そのため、このMALDI/TOF/MSイメージング解析に要する器具や試薬等を計画通り購入出来ず、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究においては、MALDI/TOF/MSイメージング用に、タンパク質の高分子量域のマスピークがより感度良く検出できると期待される、別のタイプのマトリックスを使用する計画である。このマトリックスを含め、菌感染特異的ペルオキシダーゼのMALDI/TOF/MSイメージング解析に必要となる、器具や試薬等を、次年度使用額と併せて計画的に使用する予定である。
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