雌雄異株樹木シオジの開花・結実の30年間にわたる長期動態を明らかにし、開花結実周期のメカニズムを解明するために、28年度は天然林(最高樹齢280年)・二次林(樹齢約90年)・人工林(樹齢約70年)において開花・結実の継続調査を行うとともに研究の取りまとめを行った。 30年間のシオジの開花・結実には、天然林・二次林・人工林ともに明らかな年変動が認められた。開花・結実の豊凶周期は、2-3年であった。また、開花は雌雄の間で明らかに同調していた。これらの年変動の要因として、前年度の気温や降水量などの気象要因は直接関係していなかった。このことから、年変動の要因は、樹体内の炭水化物やミネラルなどの資源の蓄積と放出であることが予想された。 シオジの開花・結実は、2-3年の短期周期の他に、30年間に明らかな長期変動が現れた。1987年から2000年頃までは2-3年を周期として、開花・結実は明瞭な豊凶を示した。つまり2-3年に1回は豊作と、ほとんど開花・結実しない凶作が訪れた。これらの豊凶は、雌雄の個体で強く同調していた。しかし、2000年以降は、このパターンに大きな変化が生じた。雄個体は毎年開花する傾向を示し、無開花の年はみられなくなった。特に天然林では豊作年が継続している。一方で雌個体は明瞭な年変動があるものの、結実量は2000年以前と比較すると増加していた。これらの現象は、高樹齢の天然林で著しかったものの、樹齢の低い二次林・人工林でもともに見られた。このことから、この長期変動の原因は林分の成長によるものではなく、気候変動などの外的な要因であると考えられる。はっきりとした原因は断定できないが、長期的な気温上昇が年間の光合成量の増加を引き起こして、樹体内の資源の蓄積と放出の期間を短縮したことが予想された。
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