本研究では、東欧3カ国における森林政策及び環境保全政策の現状把握を試みた。21世紀になってEUに加盟した旧東欧諸国で最大の森林面積と人口を擁するポーランドは、森林面積の8割を国有林が管理している。国有林は17の地方局によって分権的に管理されており、それぞれの地域において森林認証の普及や木材産業の発達など森林資源を軸とした地域経済の発展が見られた。また、ビアオヴィエジャ国立公園におけるヨーロッパバイソン保護政策の成功にみるように自然保護にも積極的であるが、森林政策と環境保護政策の連携には課題を残す。 ルーマニアはヨーロッパの中でも天然林資源や野生生物の豊富な国である。また、近年では木材生産が拡大しており、ドイツやオーストリア資本による大型の製材・木材加工工場の建設が進んでいる。こうした木材産業の進展は、国家経済への貢献という意味では重要であるが、機械化の進んだ大型工場の進出は地域雇用の減少を誘発しており、また森林資源の開発によって希少な野生生物種の減少も問題となってきている。 乾燥地域が多いトルコでは森林率が低く、そのほとんどが国有林として管理されている。造林活動は盛んで、森林面積の拡大を進めているが、経済的に貧しい人々が多く暮らす森林村落における人為的な圧力、森林火災、そして害虫による森林の劣化が問題となっている。とりわけ、700万人(人口の10%)におよぶ森林村落住民による違法伐採や不法占拠への対応は長年の課題であり、そうした住民への経済支援と抱き合わせた森林の共同管理などの政策を積極的に進めている。また、火災対策には特筆すべきものがあり、近年ではEU諸国からも注目されるほど森林火災による被害の減少がみられる。 なお、本研究はポーランド・ルーマニア・ウクライナの東欧3ヵ国を対象とした比較研究を目指したものであったが、政治的混乱からウクライナでの調査を断念せざるを得なかった。
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