研究課題/領域番号 |
25450213
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
嶋村 鉄也 愛媛大学, 農学部, 准教授 (80447987)
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研究分担者 |
二宮 生夫 愛媛大学, 農学部, 教授 (80172732)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 熱帯泥炭湿地林 / 開花結実 / 水位 / インドネシア / カリマンタン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、熱帯泥炭湿地林において樹木の開花・結実の季節性や遺伝的多様性が、水位の低下による森林の劣化に対してどのように変化するのかを解明することによって、今後の泥炭湿地林管理にむけた有効な知見と指針を提供することである。そのために本研究では、人為により水位が低下した林分とその影響を受けていない林分において調査を行い比較することによって、1)劣化に伴う水位の低下によって樹木の結実季節性や結実量の変化と2)水位の変化に伴う種子捕食者(小型ほ乳類)の動態の変化と3)水位の低下が樹木の遺伝的多様性に与える影響を解明中である。調査地はインドネシア中央カリマンタン州にある泥炭湿地林である。これまでの調査において以下のことが明らかになった。 1)択伐によって排水されている森林の水位の季節変動は、排水されていない森林と比べて大きくなっており、乾期の水位はより低く、雨期の水位はより高くなっている。 2)BlumeodendronやCalophyllumなどは、非排水区と排水区によって結実する季節がずれていた。また、Combretocarpusなどは非排水区では雨期に結実するが、排水区では乾期に結実するという結果がえられた。 3)ジャックフルーツの種子を用いた除去実験の結果、雨期における種子捕食圧は排水区の方が非排水区よりも低くなっていたことが明らかとなった。 これまでえられた結果は二年間の観察によりえられた結果であるが、現地では雨季乾季と地下水位の年変動が大きいためさらなる長期的モニタリングを行い排水と樹木の結実季節性の関係および、それらの帰結としての更新動態を解明していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は調査区の設定・樹木の結実・小型ほ乳類の動態についての調査を行うことを計画しており、それらは以下の1)~3)の項目に関する調査によって達成されている。しかしながら、本年度の乾期に生じた大規模火災により森林へのアクセスが制限され、調査地の一部も焼失してしまった。現在は、調査も再開されており、調査を継続することによって、火災が植物の種子生産・更新に与える影響を解明する手がかりをえることができる可能性がある。 1)調査区の設定については当初の予定通り、排水区および非排水区において調査区を設定し、そこにおける水位などのモニタリングを行っている。 2)樹木の結実特性についても当初の予定通り、調査区内にシードトラップを設置し、各樹種が結実する期間をモニタリングしている。 3)小型ほ乳類の動態に関しても種子を林内に継続して設置し、その除去率を測定することによってモニタリングをしている。 4)これ以外の調査に関しても、マイクロサテライトマーカーを用いたタイピングをおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の研究計画通り、調査を引き続き行う予定となっており、各調査区において水位のモニタリング、種子の結実特性にかんする調査、小型ほ乳類の動態に関する調査を継続的に行う予定である。樹木の遺伝的構造および、種子選好性に関する調査を行うこととする。野外調査に関しては現地研究協力者であるPoesie博士を中心として行うこととなっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、10月に現地へ渡航し、樹木の遺伝的構造・種子選好性に関する調査を行う調査を行う予定であったが、現地において大規模火災が発生したため、当初の予定通りに渡航して調査を行うことができなくなった。そのため、渡航期間を変更した。そのため、再度インドネシア政府から調査許可を取得する手間と手続きが必要となってしまった。そこで、充分な成果をえるために一部の渡航を延期することとした。また、それに従い調査に必要な器具の購入や、調査補助者の雇用も次年度に延期することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度消費額については、現地へ渡航し現地調査補助者を雇用する経費と、それらの調査に必要な器具を購入する経費、持ち帰ったサンプルを分析するための試薬・器具の購入および分析補助者の雇用に使用する予定である。
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