小規模林業での生産性と時間費用および経費の関係について、一般的な森林作業における地形と林内路網整備の方向性に関する分析の一部として、その特性と他の方式に対する条件別優位性比較を行なった論文を公表した。また、中山間地の小規模森林所有者が志向する経営形態について事例分析をもとに検討し、経済的な自立のために林業生産物の高付加価値化とあわせて木質バイオマス利用が重要であることを示した。 未利用広葉樹林の有効活用事例として皆伐と架線集材の組み合わせにより木質バイオマス燃料材を生産した試験作業を調査し、生産性と採算性の分析により収支改善のための方向性を提示した。この事業は主に大規模な発電利用を対象としているが、当該事業に関わる関連の取組みでは薪炭材の並行生産など小規模林家や地域経済への貢献も目的としており、小規模分散型利用とあわせて総合的な取り組みが必要であることが示唆された。 中山間地域における温湯施設ボイラを化石燃料用から木質燃料用に代替した場合の経費優位性の試算を、利用規模により小・中・大の3段階とし、木質燃料はチップ・ペレット・薪の3形態を想定し、行政補助の度合いと資源の利用可能性をパラメータとして条件別に実施した。これは、これまでに行なってきた関連成果の未実施部分を補うもので、2種類の条件組合せによる燃料形態別の最優位範囲を示すことができた。エネルギーおよび二酸化炭素排出量を評価指標にした場合に関しては、導入したLCAソフトにより検討枠組みの設定までを終了した。最終成果は2016年度夏の学会で口頭発表しその後論文にまとめる予定である。 分割材の自然乾燥実験、および薪ストーブによる燃焼実験については、実験を継続しデータを蓄積した。これら2つの実験については研究費補助期間終了後もデータの収集を継続し、できるだけ早い時期(1年後程度を目途)に成果をまとめて公表する計画としている。
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