研究課題/領域番号 |
25450217
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
木島 真志 琉球大学, 農学部, 准教授 (10466542)
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研究分担者 |
ラザフィンラベ バム 琉球大学, 農学部, 准教授 (20621527)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 管理放棄 / 獣害 / 時空間的シミュレーションモデル |
研究概要 |
本研究では、中山間地域における土地の管理放棄と獣害被害拡大の関係に着目し、土地所有者・管理者の管理放棄を含めた管理行動と獣害被害の空間発生メカニズムを考慮した時空間的シミュレーションモデルを構築し、効率的な獣害被害予防対策について経済政策分析を行うことを目的とする。本年度は、被害の空間的な広がりをシミュレーションするためのプロトタイプモデルを構築した。また、各土地所有者の管理行動を空間的にシミュレーションするマルチエージェントモデルのプロトタイプを構築した。これまでも森林における様々な被害の空間的な拡散を予測するシミュレーションモデルは構築されてきたが、管理が被害規模・程度に及ぼす影響を時空間的にシミュレーションできるモデルを用いた研究はまだ発展途上であり、空間的な土地所有者間の管理の相互作用やそれが管理放棄に及ぼす影響など複雑な要素を組み込んだモデルを用いた研究は少ない。 本年度構築したプロトタイプモデルを基礎として、最新の知見や、フィールド調査のデータを収集・分析し、それをモデルの拡張・改良に繋げることができれば、今後、様々な管理の時空間パターンとそれが獣害被害発生リスクに及ぼす影響を定量的に評価することが可能となり、獣害被害予防対策の効率性についての経済政策分析に繋がる。現在、土地利用や獣害被害の発生箇所、程度などの空間的情報の収集及びそれらを管理・分析するための地理情報システム(GIS)を整備しており、次年度以降、更に、これらの情報収集を進め、モデル構築へ反映させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、効率的な獣害被害予防対策についての経済政策分析を可能にする時空間的シミュレーションモデルの基盤となるプロトタイプモデルを構築できた。また、このプロトタイプモデルを拡張・改良するためのデータ収集に関しても空間情報を管理・解析するための地理情報システム(GIS)などの環境整備を進め、土地利用や管理に関わる情報を収集し始めた。特に、獣害被害の空間的なデータに関して新たな情報を得るとともに、今後データ収集・共有についてサポートを受ける体制を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降は、引き続き土地利用や、獣害被害の発生箇所、程度などの空間情報の収集・蓄積を行い、前年度に構築した被害拡散時空間シミュレーションモデル及びマルチエージェントモデルのプロトタイプモデルを改良・拡張する。更に、政策シミュレーションや経済分析に繋げるため、収集・蓄積したデータと上記モデルを地理情報システムを用いて結合し、政策の影響など様々な土地利用のパターンが獣害被害に及ぼす影響を可視化できるシステムの構築を試みる。今後の具体的な課題は下記の通りである。(1)被害拡散時空間シミュレーションモデルの改良・拡張:本研究では、管理放棄が発生するメカニズムと獣害被害の発生の関係を考慮に入れた被害拡散時空間シミュレーションモデルの構築を試みるため、野生動物の移動範囲や定住条件、えさ場条件に加えて、管理費用及び木材・農作物価格などの情報が必要になる。今年度も引き続き、これらの情報収集とそれらをモデル構築に反映させる作業を進めていく。(2)マルチエージェントモデルの改良・拡張:各土地所有者・管理者の管理行動とその相互作用については、前年度に構築したプロトタイプをもとに、管理放棄のリスクを定量化できるモデルへと拡張する。管理放棄の発生メカニズムについては、これまで木材価格のダイナミックスに着目し、生産を継続することが可能な市場価格の閾値を分析した研究が行われてきた。これらの知見をモデルに組み込むと同時に周辺環境の悪化による獣害リスクとそれによる更なる管理放棄リスクの高まりを考慮できるモデルへの改良・拡張を試みる。(3)土地利用最適化モデルの構築:上記のマルチエージェントモデルが構築できれば、異なる管理時空間パターンの効率性を比較することが可能であるが、最も効率的なものかどうかは不明である。そこで、効率性を評価する基準として、最適化モデルを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は、スケジュールが合わせられないケースが生じたため、当初予定していた調査のための人件費や謝金を必要とする調査が実施できなかった。さらに、物品については、当初予定した額よりも安価なものが購入できた。これらの理由により、次年度使用額が生じた。 本年度は、スケジューリングをより効果的に行い、調査を実施し、そのための旅費を執行するとともに、調査分析やデータ入力に関わる人件費・謝金を執行する。更に、本年度から研究成果の一部を学会等で発表していく予定であるため、これについても予算を旅費として執行する。物品については、調査・分析の効率化を図るためPCソフトウェアなどを購入する予定である。
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