ソルビタントリオレートがスギ雄花の褐変に及ぼす影響について、透過型電子顕微鏡でソルビタントリオレートを処理したスギ雄花の細胞を観察すると、原形質分離が起こって細胞膜が断裂し、細胞内容物が放出されるなど、ネクローシス型プログラム細胞死が起こっていることが明らかとなったが、クローン間における差異については、形態学的に明らかにすることは出来なかった。いずれにしても、ソルビタントリオレート処理による花粉形成抑制が、他殺的に起こるのではなく、自殺を促す仕方で誘導されることは特筆すべきことであり、これが雄花のみを褐変枯死させる選択性発現の鍵となっていることは確かである。 昨年度発見したソルビタントリオレートによるスギ球果の抑制効果について再度検討を行い、対照区の球果の数が11.4±9.7で会ったのに対し、ソルビタントリオレート処理区の球果の数は2.4±3.6であり、5%水準で有意差が見られることが明らかとなった。ソルビタントリオレート処理区では、雄花が褐変・枯死するとともに、球果の形成が抑制され、スギ苗の成長阻害が起こりにくいものと考えられた。 これらの成果の一部は、アレルギーの臨床4月号(2016)に掲載された。
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