研究課題
花粉を飛散しない性質を持つスギ(雄性不稔スギもしくは無花粉スギ)をDNA情報(マーカー)によって判定する技術を開発するために、本年度はRAD-Seq法を利用してマーカー開発を行った。RAD-Seq法では、ある特定のDNA配列を認識してDNAを切断する酵素を利用してゲノムDNAを断片化し300~600bp程度の短い断片を回収する。そして、その回収されたDNA断片の中に存在する遺伝的変異を利用してマーカーの開発を行った。このようなRAD-Seq法を利用して得られたマーカーについて、まず、雄性不稔の原因遺伝子(MALE STERILITY 1(ms1))から、どの程度、離れた場所に存在するのかを解析するために、人工交配により作成された「T5」交配家系(173個体からなり、雄性不稔は劣性のメンデル遺伝に従うため約半数の88個体が雄性不稔を示し、残りの85個体は可稔(正常)である)を利用して連鎖解析を行った。その結果、一つのマーカーはms1遺伝子から0.6cMだけ離れた近接した場所に存在すると推定された。「T5」交配家系に限定すると、このマーカーを利用することで99%の個体について、雄性不稔と正常のスギを判別できることが明らかになった。さらに「T5」交配家系以外で、ms1に由来する雄性不稔スギ(ms1をホモ接合で保有する4個体)と可稔ではあるもののms1遺伝子をヘテロ接合で保有するスギ(7個体)の計11個体について、マーカーの遺伝子型とMS1の遺伝子型との対応を調べたところ、可稔の3個体を除いて、一致した。今回開発されたマーカーは雄性不稔の原因遺伝子に完全に連鎖しているわけではないが、交配家系を利用した雄性不稔スギの育種において広く利用できる可能性があると期待される。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Tree Genetics and Genomes
巻: 12 ページ: 印刷中
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/cjgenome/index.html