研究課題/領域番号 |
25450224
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
稲垣 善之 独立行政法人森林総合研究所, 四国支所, 主任研究員 (00353590)
|
研究分担者 |
木庭 啓介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90311745)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 窒素 / 下層植生 / ヒノキ / 間伐 |
研究実績の概要 |
ヒノキ林において間伐を実施すると、残存木が利用することのできる光、水、養分などの資源が増加する。また、間伐後には林床における下層植生が増加する。これらの変化は、残存木や下層植生の窒素利用様式に影響を及ぼすことが予想される。植物の窒素安定同位体比は植物が利用する窒素源によって異なることが知らせており、間伐がヒノキと下層植生の窒素利用に及ぼす影響を明らかにすることができる。本研究では、高知県の異なる標高域(天狗 1150m, 旧宮 710m)にヒノキ林を選定した。それぞれのヒノキ林に斜面に隣り合う2つの 20m × 20m の調査区を設定した。一方を 50%の割合で間伐し、もう一方を無間伐の対照区とした。間伐後6年間にわたりヒノキと下層植生(天狗ではシロモジ、旧宮ではケクロモジ)の葉を採取した。窒素資源の多い天狗ではヒノキの窒素安定同位体比 は4-6 年後には間伐区で有意に増加した。一方、下層植生の窒素安定同位体比は、間伐区では有意に低下し、ヒノキに近い値を示した。これらの結果より、無間伐区ではヒノキと下層植生が異なる窒素源を利用するが、間伐区では共通の窒素源を多く利用することが示唆された。窒素資源の乏しい旧宮ではヒノキの窒素安定同位体比に間伐区と対照区の差は認められなかった。下層植生の窒素安定同位体比は対照区でヒノキに近い値を示し、間伐区で1、4,6 年後に対照区よりも有意に高かった。この結果より、貧栄養な条件では対照区ではヒノキと下層植生が共通の窒素源を多く利用していること、間伐区では窒素資源の増加に対応して、下層植生の窒素源は変化するがヒノキの窒素源は変化しないことが示唆された。下層植生はヒノキに比べて窒素資源の増加に対して窒素源を速やかに変化させる能力が高いと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高知県のヒノキ人工林において、間伐が植栽木と下層植生の葉の窒素安定同位体比に及ぼす影響を明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
全国のリターフォールの結果を取りまとめヒノキ林における植栽木と下層植生の窒素吸収量の割合を明らかにし、下層植生による植栽木の窒素吸収促進効果を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
試料調整を次年度に行うことにしたため、人件費について次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
試料の調整のため、人件費として使用する。
|