研究課題
森林の炭素動態に大きく寄与する枯死木の分解過程解明のために簡易に分解者を推定する手法として近赤外分光法をもちいて分解残渣から分解者を推定する手法の開発をおこなった。研究期間内に解析に使用するスギ材とヒノキ材のサンプルとして、全国各地で採取した枯死木225個体、および気候と主たる分解者群集の異なる3地域(亜寒帯・木材腐朽菌類優占型:北海道・羊ヶ丘、温帯・木材腐朽菌類シロアリ混合型:茨城・桂、筑波山、暖帯・シロアリ優占型:鹿児島・吹上浜)での材分解試験を実施し得られた分解試験材96個体、実験室で純粋培養した白色腐朽菌と褐色腐朽菌による分解試験材11個体について、立地情報と従来法による木材成分分析値および近赤外スペクトルをデータベース化した。白色腐朽菌と褐色腐朽菌による分解試験材の近赤外スペクトル(波数域:6750-5550cm-1)は吸光度の二次微分値をもちいたPCA解析によって腐朽菌種別にグループに分けられることを明らかにした。上記のデータに枯死木と分解試験材の全てのデータを加えて同様にPCA解析すると、第一主成分に沿って白色腐朽菌と褐色腐朽菌のグループの中間に枯死木と分解試験材データは存在した。これらのグループに分ける要因(第一主成分)はリグニン濃度と高い相関を示した。つまり、中間に位置する枯死木と分解試験材グループ内でリグニン濃度が高いものは褐色腐朽菌グループ寄りに位置することになり、本手法をもちいることで褐色腐朽菌類による分解は推定可能であると考えられた。一方、中間から白色腐朽菌よりの位置にあるサンプルには褐色腐朽菌以外の白色腐朽菌やシロアリ等が含まれたものと推察されこれらを推定するにはさらなる検討が必要である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
九州森林研究
巻: 69 ページ: 75-80
PLOS ONE
巻: 10 ページ: e0145113
10.1371/journal.pone.0145113