研究課題/領域番号 |
25450229
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研究機関 | 国立研究開発法人 森林総合研究所 |
研究代表者 |
志知 幸治 国立研究開発法人 森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (10353715)
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研究分担者 |
池田 重人 国立研究開発法人 森林総合研究所, 立地環境研究領域, チーム長 (60353570)
岡本 透 国立研究開発法人 森林総合研究所, 関西支所, チーム長 (40353627)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 秋田スギ / 人間活動 / 森林管理 / 歴史史料 / 完新世 / 植生変遷 / 花粉分析 |
研究実績の概要 |
本研究は秋田県地方を中心にスギ林が拡大・成立するまでの過程を堆積物試料の花粉分析に基づいて復元し、古文書・絵図などの史料による解析結果との比較を行うことで、人間活動がスギ林変遷に及ぼした影響を解明することを目的としている。今年度は藤里町の田苗代湿原において堆積物試料を採取し、年代測定、花粉分析および採取地点周辺の史料収集を行った。その結果、田苗代湿原周辺では約1万年前以降からスギは少数生育していたが、その後現在まで大きく拡大しなかったことが明らかになった。享保年間に描かれた山本郡見当山絵図から、田苗代湿原の南東10kmに分布する天然スギ林は300年前にはすでに認識されていたと判断できた。一方、江戸時代以降の人間活動が与えた影響を復元するために、秋田市の男潟においても湖沼堆積物を採取した。こちらは花粉分析および史料収集は行ったが、Pb-210およびCs-137法による年代推定が不十分なため、人間活動の影響を詳細に行うことはできなかった。 これまで調査結果を解析し、秋田県内の多くの地点で晩氷期から完新世初期にスギは少数分布しており、約3000~2500年前に拡大を開始したことが判明した。桑ノ木台湿原など現在天然スギ林が存在する地域周辺でスギの拡大時期が早かったことと合わせて、この地域に天然分布するスギは、従来から言われてきた若狭湾周辺からの拡大よりも、気候の冷涼化によって以前から存在していた小規模なスギ集団が拡大した可能性が高いと考えられた。また、多くの地域でスギは約600~500年前に最も優占したが、500年前以降は減少した。すべての地点でスギの減少に伴ってマツや草本類が増加し、栽培種のソバ花粉の産出がみられた地点もあったことから、室町時代後期以降に農耕や材利用など人間活動の影響がスギ林変遷に影響を与えたことが明らかになった。
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