本年度は最終年であり、野外観察、室内試験、フィールド調査により得られたデータを解析し、論文にまとめた。また、防除方法の現地確認を行った。 ヤノナミガタチビタマムシの幼虫は潜葉性で、ケヤキの葉の中に生息する。ケヤキは本害虫の被害を受けると早期に葉を落葉させる(早期落葉)。野外観察で、被害林では雨が多いと本害虫の個体数が減少することが示された。室内試験の加湿区と乾燥区では、加湿区で本害虫の死亡率が高まる結果となった。フィールド調査でも、散水区と無散水区を作り比較したが、散水区で本害虫の死亡率が有意に高かった。 これらのことから、雨が多い年は、早期落葉中の本害虫の死亡率が高まり、早期落葉はケヤキにプラスに働くこと、しかし、雨が少ない年は、早期落葉中の本害虫の死亡率は低く、早期落葉はケヤキに特にメリットをもたらさないことが明らかになった。このように、雨量により早期落葉の効果が違ってくること、そしてそれが害虫の個体数変動に大きく影響していることが明らかになった。 雨量で被害量の大小が推定ができる可能性があること、また防除は早期落葉を集めビニールシートをかけ周囲を埋める方法で対応できることを明らかとした。
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