静荷重方式の樹幹ヤング率評価法の確立を目的として,平成27年度は以下の項目について研究を実施した。 1.樹幹ヤング率,樹幹の応力波伝播速度と丸太の動的ヤング率の比較:北海道三笠市の試験林で19年生グイマツ雑種40本を伐採し,地上高50~230cmの区間から採取した丸太について縦振動法で動的ヤング率を測定した。その後,丸太の元口から40-50cm区間から得た円板について割裂法で旋回木理を測定した。測定した丸太の動的ヤング率と,平成26年度,立木状態で測定した樹幹ヤング率および応力波伝播速度の二乗値との関係を検討した結果,丸太の動的ヤング率と樹幹ヤング率との相関について,相関係数は0.56と大きくなかったが,1%水準で有意であった。一方,応力波伝播速度の二乗値とは無相関(r=0.07)であった。丸太外縁部の繊維傾斜は小さく立木樹幹のヤング率への影響は小さかったと推察できた。 2.樹幹内のヤング率と曲げ性能の半径方向分布の測定:平成26年度に伐採したトドマツ丸太10本,カラマツ丸太10本,およびグイマツ雑種丸太40本から髄を通る柾目板を製材した。それらを気乾状態まで乾燥後に,外縁部と心材部から20×20×300mmの無欠点小試験体を採取し,形成層年齢を記録した後,縦振動試験と曲げ破壊試験を行った。その結果,グイマツ雑種では外縁部と心材部の間にヤング率や曲げ強さの相関が認められなかった。これはグイマツ雑種の林齢が19年と若かったため,外縁部の形成層年齢が10年に満たないものが多く,まだ材質が安定しない未成熟材であったためと考えられた。このことが立木状態で測定したヤング率と丸太の動的ヤング率の相関が小さかった理由と考えられた。 3.樹幹の曲げ試験から剛性を評価する方法の検討:三笠市の試験林で,樹幹のたわみにおよぼず隣接木の影響を検討し,荷重~変位関係からヤング率を算出する方法を改良した。
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