研究課題/領域番号 |
25450236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 勉 北見工業大学, 工学部, 教授 (20125389)
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研究分担者 |
岡崎 文保 北見工業大学, 工学部, 准教授 (10213927)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオマス / 水素 / 触媒・化学プロセス / 再生可能エネルギー / 木炭 |
研究概要 |
500°, 700°, 900°C炭化したカラマツ木部(LW)炭に市販の木酢酸鉄(FeAと略)を金属鉄として3, 5, 10wt%添加した後固定床ダウンドラフト型反応器中でArをキャリアとして750, 800, 850°Cの水蒸気ガス化を行った。その結果、FeAはこのガス化温度付近ではほとんど凝集せず、水素生成反応(C+2H2O→CO2+2H2)を著しく促進して迅速高効率の水素製造が可能となることを確認した。また、木炭化温度、ガス化温度はそれぞれ500°C、800°Cが最適で、FeA添加量は3wt%で十分であり、適正な全ガス流量(Ar+H2O)と水蒸気分圧(pH2O, H2O/Ar+H2O)が存在することも分かった。 他方FeAの性状をIR、1H-NMR、GPC、TGで調べ、CHNO組成を計算し、FeA坦持木炭のXPS分析、SEM-EDX観察、X線回折を行い、高温難凝集の真因が高分子量のFeキレート錯体として木炭に粘着することにあると推断した。 さらに、カラマツ樹皮(LB)500°C炭の800°C水蒸気ガス化反応性を調べて上記LW炭と比較し、LB炭はFeA添加では水素生成の点で劣るが、無添加ではむしろ優ることを明らかにした。これらの状況は、LB炭では多量に含まれるCaがFeA(鉄)の毒として働くが、無添加ではある程度良好な触媒作用を発揮するためと説明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展し、最大の目的であるFeA坦持木部炭の水蒸気ガス化による迅速高効率水素製造の基本工程を確立した。また、木部炭と樹皮炭のガス化反応性とFeAの触媒効果の相違を明らかにした。なお、当初の計画では、針葉樹木部(LW)炭と広葉樹木部(BW)炭についてFeAの触媒効果を調べる予定であったが、FeAの高温難凝集の解明を優先して妥当な見解を導くに至った。ガス化残渣からの鉄回収については、当初の計画を見直し、FeAの自作を兼ねて次(H26)年度に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本(H26)年度の最大課題は、FeAの自作である。即ち、前年度は市販FeAを使用したが、H26年度は1)カラマツ木部とシラカンバ木部をそれぞれ500°C炭化して回収した木酢液(LW-PA、BW-PA)を使用してヘマタイト(Fe2O3)からのFeA製造を実施する。より具体的には、LW-PAとBW-PA中でFe2O3を還流加熱し、生成した黒色粘稠成分(FeAに相当)を回収して500°CLW炭、LB炭に添加し、LW由来FeAとBW由来FeAの製造率、800°C水蒸気ガス化における触媒効果及び性状の相違等を調査する。これと並行して2)両樹木由来FeA坦持ガス化残渣について上記工程を適用し、鉄のFeAとしての再生、回収を検討する。3)本プロセス(FeA坦持木部炭の水蒸気ガス化による迅速高効率水素製造)の実用化に向けて連続運転(反応器へのFeA坦持木部炭の連続供給と反応器からのガス化残渣の連続排出)を検討する。ただし、3)に関する連続ガス化装置の試作、運転等は、別の外部資金が獲得できれば、実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年5月21-23日Taiwan, Taipeiにて開催予定の国際学会(The 2014 Pan Pacific Conference of the Techni-cal Associations of the Pulp and Paper Industry)において研究成果を発表するため、その参加登録費2名分(US 600$)を保留した。 上記理由の通り、参加登録費として使用する。
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