前年の研究で、木炭に直接添加して800℃水蒸気ガス化による高速高効率の水素製造を可能とする触媒(木酢酸鉄FeA)が、鉄工所排出の屑鉄と市販の木酢液から容易に自作できることを明らかにした。本年度は、より簡便なFeAの自作法を開発する目的で、鉄屑と木材炭化中に副生する液状成分(木タールと木酢液の混合物)を直接混合、加熱し、不溶物を濾別した鉄可溶液体の触媒効果を調査した。その結果、Fe含有量を5-10wt%に調節して500℃木炭粉に含浸し、Fe坦持量を5wt%とした木炭は所定の水蒸気ガス化条件で満足しうる反応性を呈することが分かった。このことは、本方式による木炭からの水素製造は木炭製造現場で実施することが望ましく、現在の炭材の搬入、調達等のインフラ整備を含む木炭製造のあり方を根本的に見直す必要があることを提示する。なお、本研究の結果は、昨(2015)年8月開催の日本エネルギー学会大会(札幌)のバイオマスセッション基調講演「鉄系触媒炭化によるウッドリファイナリー:機能性炭素と流体燃料の併産プロセスの構築を目指して」において発表した。
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