研究実績の概要 |
本研究では、製紙用化学パルプ製造における酸素漂白過程において重大な問題である多糖類の分解を抑制し、選択的なリグニンの除去を可能とする新技術として、アルカリ性マンガン添加酸素および酸性マンガン逐次処理による漂白法を構築することを目的として、モデル化合物等を用いた本逐次漂白技術の基礎的知見の蓄積と最適反応条件の確立、および、パルプを用いたその有効性の確認を行う。 本年度は、非フェノール性リグニンモデル化合物3,4-ジメトキシベンジルアルコール(A)、2-(2-メトシキフェノキシ)-1-(3,4-ジメトキシフェニル)-1,3-プロパンジオール(B)、および、2-(4-ヒドロキシメチル-2-メトシキフェノキシ)-1-(3,4-ジメトキシフェニル)-1,3-プロパンジオール(C)を、本逐次処理後段である酸性下における二酸化マンガン酸化に供し、その被酸化挙動を解析した。なお、化合物BおよびCは、化学合成によって調製した。 化合物Aの室温・酸性下における二酸化マンガンによる酸化は、pH=2の条件下でも起こり、また、酸の濃度の増加と共に速くなった。分解生成物として、3,4-ジメトキシベンズアルデヒドが8割程度の収率で得られた。また、化合物Aの消失は擬一次反応と比較して反応の進行と共に加速されたため、反応の進行に伴って、化合物Aを分解する何らかの新たな化学種(3価マンガンが合理的)が生成すると考えられた。化合物Bの室温・pH=1における処理では、3,4-ジメトキシベンズアルデヒドが相当量得られたため、この処理によってリグニンが低分子化され、脱リグニンされる可能性が示唆された。一方、化合物Cの室温・pH=1における処理では、2-(4-ヒドロキシメチル-2-メトシキフェノキシ)-1-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-1-プロパノンが得られ、α位が酸化されることが明らかとなった。
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