一般に心材成分量は樹幹等放射方向において、心材外方から髄に向かって減少する傾向がある。スギ心材ノルリグナンもこの傾向を示し、減少の一因として我々は、ノルリグナンの二次変化(重合)を想定している。本研究では、スギ心材におけるノルリグナンオリゴマーの質的・量的な挙動を調査し、スギ心材形成におけるノルリグナンの二次変化、特に重合について検討した。 スギ赤心材、黒心材の心材から酢酸エチル可溶部を調製した。これらについてGPC-HPLC分析を行った。その結果、赤心材と比較して、黒心材にはより高分子化合物が含まれていることが分かった。また樹幹放射方向で比較すると、特に黒心材の場合、心材内方ほど高分子化合物の割合が増加する傾向にあった。 次に、酢酸エチル可溶部についてLH-20カラムクロマトグラフィを行い、50、55、60、100%メタノール溶出画分に分画した。各画分のGPC-HPLC分析の結果、50%溶出部にはノルリグナンモノマー、55%にはモノマー~二量体、60%には二~三量体、100%には六~十一量体に相当する分子量の化合物が主に検出され、したがって分子量に基づいて分画されていることが分かった。。 上述の55、60%メタノール溶出画分についてLCMS分析を行った。その結果、数種類のノルリグナン二量体および三量体が検出された。これらの存在量を樹幹放射方向で比較すると、赤心材の場合、心材外方から中央部さらに内方に向かい増加する傾向にあった。一方、黒心材の場合、ニ・三量体量は心材外方から中央部に向かい増加し、次いで内方に向かい減少する傾向にあった。したがって、赤心材では樹木の成長に伴いノルリグナン重合が進行すること、一方黒心材では二・三量体がさらに重合等し、変化している可能性があること示された。
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