近年、地球温暖化や天然資源の枯渇が社会問題となる中、森林が地球環境を保全し、持続が可能な資源の一つとして木材が注目されている。研究代表者らは、林野庁が提唱する「子供から大人までの木材に対する親しみや木の文化への理解を深めるため、多様な関係者が連携・協力しながら、材料としての木材の良さやその利用の意義等を学ぶ、木材利用に関する教育活動(木育)」を推進してきた。これまでに子どもを対象とした木を素材にしたものづくり教室(子どもの木育)、それらを指導するスタッフの養成講座(大人の木育)、現職教員や教育学部学生を対象とした講座(教員・学生の木育)を継続し実施した。 平成28年度は、それらの教室・講座等の実施とともに、各対象者に対して意識と行動変容など木育の効果について検証を行った。子どものものづくり教室は、11回(内、2回は熊本地震による被災地支援として開催)、スタッフ養成講座は7回(内1回は山口県)実施し講座の内容をブラッシュアップした。子どもを対象とした講座以外に、高齢者の介護予防を目的とした講座も実施するとともに、その効果についても検証した。同様に、昨年度から開始した林業に携わる高校生に対しても、木育講座を実施し、その効果を検証した。大学においても、教育学部生を対象とした講義を5コマ実施した。これらの実施に当たり、教材の作成とカリキュラムを開発した。 本科学研究費により取り組んだ研究実践について、まとめた単著(「森林親和運動としての木育 ―ものづくりの復権と森林化社会の実現」九州大学出版)を、平成29年3月に刊行した。なお、刊行に当たっては、平成 28 年度科学研究費助成事業「研究成果公開促進費」(課題番号:16HP5258)の支援をいただいた。 さらに、昨年度に引き続き、研究成果を一般市民に公開する場として、平成29年1月に「木育のつどい」を熊本県と共同主催した。
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