担子菌の生活環の中でも、子実体の形態形成は他の過程と比べて、形態的に著しい変化を示し、食料資源としての経済的価値のみならず、分子細胞生物学的にも興味深い現象である。シイタケについては、子実体形成期に特異的発現を示す複数の遺伝子について報告がある。しかし、逆遺伝学的解析が進んでおらず、子実体形成の主要な分子機構の解明には至っていないのが現状である。本研究ではシイタケの子実体形成メカニズムを解明するために、特定遺伝子のノックダウンと、評価としての液体培地上での子実体形成率を組み合わせた逆遺伝学的なアプローチを可能とするために形質転換手法の確立とRNAiを用いた遺伝子ノックダウンを試みた。これまでの研究で、シイタケ子実体形成へは光照射が必須であることが分かっており、光受容体と考えられるタンパク質遺伝子も報告されている。そこで既報の光受容体タンパク質がシイタケ子実体形成にどのように関わっているかを明らかにするために、シイタケ光受容体タンパク質をコードしているLe.phrA遺伝子のクローニングを行い、全長cDNAおよびゲノムDNAを得たうえで、コード領域約600 bpを対象に、GUS部分配列をリンカーとしたRNAiコンストラクトを構築した。構築したベクターをプロトプラスト-PEG法により、薬剤耐性マーカーと共に導入し形質転換株を得たところ、形質転換体を得ることができ、そのうちいくつかは表現型として菌糸伸長速度の低下や着色が見られた。子実体形成能に対する影響については現在実験を継続中である。
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