研究課題/領域番号 |
25450246
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
宮藤 久士 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (00293928)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イオン液体 / 木質バイオマス / 液化 / 化学変換 |
研究実績の概要 |
本研究では、イオン液体を用いた新規な木質バイオマスの化学変換法の確立を目指し、木質バイオマスのイオン液体中での液化反応について、化学成分的な観点と組織構造的な観点の両面から検討を行い、反応機構の全容を明らかにすることを研究目的としている。前年度(平成25年度)は、イミダゾリウム系イオン液体を用いた処理で、セルロース、ヘミセルロースの液化が優先的に生じること、さらに、液化した木材成分は低分子化し、各種単糖や糖分解物が生成することを明らかにした。それを受けて本年度(平成26年度)は、イオン液体中におけるリグニンの低分子化メカニズムの解明およびイオン液体中での木材液化反応における組織構造変化の解明を行い、下記のような研究成果が得られた。 スギおよびブナから単離した摩砕リグニンを試料として、イミダゾリウム系イオン液体を用いて処理を行った結果、どちらの試料もイオン液体に速やかに可溶化した。可溶化したリグニン試料は、反応時間の経過とともに分子量の低下が見られたが、フェニルプロパン単位の化合物を多量に生成するような著しい変化ではないことが明らかとなった。しかしながら、収率は高くないものの、分解物としてバニリンやコニフェリルアルデヒドなどの低分子化合物の生成も見られたことから、リグニン試料の一部が分解を受けていることが判明した。 また、組織構造変化に関する検討から、スギでは早材部は目立った構造変化は見られなかったが、晩材部において細胞同士の解離が見られた。また、ブナでは早材部、晩材部とも木部繊維において著しい膨潤が見られた。また、細胞表面の溶解、道管放射組織間壁孔における壁孔膜の破壊、木部繊維や柔細胞における二次壁と複合細胞間層の解離が観察された。これらのことから、イオン液体の反応性は、樹種や細胞の種類に大きく依存することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(平成26年度)の研究計画では、1)イオン液体中におけるリグニンの低分子化メカニズムの解明と2)イオン液体中での木材液化反応における組織構造変化の解明を課題としていたが、両課題とも成果が得られており、学会での成果発表および査読付き論文発表にも結び付いていることから、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を受けて、平成27年度は当初の研究計画に従って、下記のような研究を推進していく。 1)イオン液体中での木材液化反応における組織構造変化の解明 光学顕微鏡観察を行うことで、イオン液体で加熱処理を行った木材サンプルについて、詳細な組織構造変化の解析を行う。具体的には、組織構造が異なる針葉樹と広葉樹の各種組織構造について、イオン液体に対する反応性の違いを微細構造の点から明らかにしていく。また、走査型電子顕微鏡を用いた観察も併用しながら、より詳細な組織構造変化について明らかにしていく。さらにラマン顕微鏡などの分析顕微鏡を用いた解析も行うことで、各組織構造レベルでの化学成分組成変化についても明らかにしていく。この結果とこれまでの研究で明らかになっている化学成分組成分析の結果とを関連づけながら、各木材組織構造の反応性について考察を加えていく。 2)イオン液体中での木材の液化メカニズムの解明 前2年間および本年度の検討から得られた化学成分レベル、細胞レベル、組織構造レベルでのイオン液体の反応について総括しながら、イオン液体中での木材の液化反応のメカニズムについて、その全容を明らかにしていく。
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