研究課題/領域番号 |
25450247
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
田中 裕美 近畿大学, 農学部, 教授 (30140338)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 木材分解 / 水酸化ラジカル / 糖タンパク質 / タンパク質発現 / ピリジン補酵素 |
研究実績の概要 |
26年度に用いた木材腐朽菌に加え、白色腐朽菌Irpex lacteus、褐色腐朽菌Gloeophyllum trabeumを、木粉添加Kirk寒天培地で培養し、所定期間培養後酢酸緩衝液を用いて菌体外分泌物を回収した。凍結乾燥によって濃縮後、硫安沈殿、Sephadex G-50ゲルろ過クロマトグラフィーにより水酸化ラジカル生成物質の部分精製を行った。 この物質によって水酸化ラジカルが連続的に生成されるためには電子供与体の存在が必要である。リグニン分解菌Phanerochaete chrysosporiumは菌体外にNADHを分泌することが報告され、部分精製した糖タンパク質にNADHを添加すると一電子酸化活性が増加することから、電子供与体の候補としてNADHを想定しピリジン補酵素の定量をMTT法を用いて測定した。数種の白色腐朽菌、褐色腐朽菌、軟腐朽菌を用いた結果、白色腐朽菌および褐色腐朽菌の木粉添加培地で検出されたピリジン補酵素はグルコース培地より多かった。NAD+の存在量は木粉添加培地ではIrpex lacteus以外はNADHの存在量よりも多く、グルコース培地ではFomitopsis palustri以外はNADHの存在量よりも多かった。軟腐朽菌では木片培地、グルコース培地ともにピリジン補酵素が検出された。木材を分解できない Penicillium funiculosimはいずれの培地でもピリジン補酵素を検出できなかった。木材を分解できる菌は水酸化ラジカル生産のため電子供与体として作用するピリジン補酵素が菌体外に存在することを示した。 次に酵母タンパク質発現系を用い、ベクターにN末端翻訳領域から終止コドンまでの塩基配列をインサートした。発現用酵母で形質転換後、得られた発現タンパク質を精製し、抗原抗体反応を行い目的タンパク質の確認を行い、水酸化ラジカル発生量を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度に引き続いて用いた褐色腐朽菌は菌体外に存在する多糖類のためか、使用した木粉が広葉樹のブナであったためか生育があまりよくなく、菌体外分泌物の回収量が少なかった。26年度に新たに加えた白色腐朽菌Irpex lacteus、褐色腐朽菌Gloeophyllum trabe-umからの回収量もあまり多くなく、部分精製後、詳細な組成分の定量、電気泳動、N末端アミノ酸配列解析まで至っていない。 酵母系を用いて発現タンパク質を得ることができたが、発現タンパク質の抗原抗体反応に関して検討が必要である。 木材を分解できる白色、褐色、軟腐朽菌ではピリジン補酵素が菌体外に存在が確認され、水酸化ラジカル生成糖タンパク質が連続的に水酸化ラジカルを生成するために電子供与体として作用することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
酵母発現系のうち、PGSY-2Vectorを用いた系で発現、精製したタンパク質を用いて抗原抗体反応を行い、目的タンパク質の確認を行う。さらに発現タンパク質を用いて詳細な水酸化ラジカル生成機構を解明する。 水酸化ラジカルが糖タンパク質によって連続的に生成されるための電子供与体としてのピリジン補酵素の存在をMTT法を用いて分光光度計により測定した。今後は存在量の多かった菌について、HPLCなどを用いたNADHの定量を検討する。
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