研究課題/領域番号 |
25450248
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
戸田 正彦 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林産試験場, 主査 (60446317)
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研究分担者 |
野田 康信 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林産試験場, 研究主任 (30446322)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 釘 / すべり量 / 耐力 / 弾性床理論 / ヨーロッパ型降伏理論 |
研究概要 |
現在の木質構造における接合部の設計法では異種接合具を併用する接合部の耐力は実験によって確認する必要があるが,実務的にはどちらか一方の接合具の耐力のみを採用して設計するという,安全側ではあるが合理的ではない設計手法が用いられている。そこで本研究では,このような接合部の合理的な設計手法について検討を行う。 平成25年度は,単一接合要素の荷重-すべり曲線のデータベースを構築するため,釘を用いた接合部の加力試験を行い,以下の結論を得た。 (1)接合具が単独の場合の接合性能:トドマツ材にCN50釘を打ち付けた鋼板添え板釘打ち接合の一面せん断試験を行い,荷重-すべり量の関係曲線データを蓄積するとともに,主材の密度に基づく変形性能の推定を試みた。その結果,最大せん断耐力と密度との間には有意な相関関係が存在することを確認した。一方,密度をパラメータとすることによって,降伏耐力をヨーロッパ型降伏理論から,また剛性(すべり係数)を弾性床理論から推定することが可能であるが,実験値と推定値との相関係数は最大耐力の場合に比べて低い結果となった。これは,今回のような径の細い釘の場合のせん断変形挙動は,密度だけでなく木材の年輪構成や材質の不均一性による影響を受けやすいためと考えられる。 (2)同種接合具を複数用いた場合の接合性能:同一のスギ材を繰り返し使用して,CN50釘の本数を1,2,3本と変化させて(1)と同様の鋼板添え板釘接合の一面せん断試験を実施し,釘本数と接合性能の関係について検討した。その結果,初期剛性はおおむね釘本数に応じて増加するが,最大耐力は釘本数に相当する値には達しない場合があることが確認された。これは,木質構造設計規準に則り接合具同士の間隔を十分に確保したにも関わらず,最初に最大耐力に達した釘接合部の木部の割れ等が隣接する釘接合部の性能に影響を及ぼしたためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は,異種接合具を併用した場合の変形挙動を推定するための基準データとなる単一接合具での荷重-すべり量の関係データを,鋼板添え板釘接合部の一面せん断試験を実施することによって取得し,特に接合具が1本だけの場合と複数本用いた場合の挙動の差異や破壊形態の違いについて検討を行った。ただし計画で対象とした接合具のうち,ボルトとラグスクリューについては未実施であること,また設定した加力方向のうち45度,90度については未実施であることから,進捗状況は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
前年度未実施分の試験を今年度前期中に終了させるとともに,今年度の主要な研究項目である異種接合具を組み合わせた接合部の加力試験を行い,荷重-すべり関係のデータを取得するとともに,併用による性能変化および変形挙動の推定手法について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試験用に購入予定の集成材の納品が年度内に間に合わなかったため。 今年度前期中に試験体の発注・納品を完了させる。
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