研究課題/領域番号 |
25450250
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
片岡 厚 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (80353639)
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研究分担者 |
木口 実 独立行政法人森林総合研究所, 研究コーディネータ, 木質バイオマス利用研究担当 (50353660)
松永 浩史 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (80391184)
石川 敦子 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, チーム長 (00353574)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 保存 / 耐候性 / 塗装 / 浸透性 / 木材 |
研究実績の概要 |
最近、公共建築物や商業ビル外装など屋外での木材利用の機会が増え、塗装による耐候性付与技術の重要性が再認識されている。木材の塗装耐候性を向上させるには、予め木材の表面を粗面化して浸透性を高め、その後塗装することによって、単位面積当たりの塗り付け量(塗布量)を増やすことが効果的であるとされている。しかし、粗面化の程度と塗布量および性能との関係については、これまで定性的な理解に留まる例が多く、未だ多くの不明点が残されている。 本研究は、これらの関係について理解を深め、耐候性能の向上に役立てることを目的とする。前年度は、粗面化処理として帯鋸製材によるラフソーン(鋸目)仕上げの効果を検討し、送材速度を制御することで、仕上げ面の算術平均粗さ(Ra)と塗装時の塗布量を調整できることを示した。今年度は、ラフソーン後に木材保護塗料で塗装された試片を、主に促進耐候性試験に供し、耐候性能に及ぼす粗面化処理と塗布量の影響を解析した。送材速度10, 20, 30 m/分でラフソーン仕上げされた試片への平均塗布量は、それぞれ242、261、274 g/m2であった。促進耐候性試験1500時間まで、これらの試片の色差(変色の大きさ)の値は5以下に留まった。一方、平滑面に塗料を通常塗りされた試片(平均塗布量121 g/m2)では促進耐候性試験1500時間後の色差が約10、平滑面に厚塗りされた試片(同261 g/m2)では約8に達した。これらの結果から、ラフソーンによる粗面化試片の木材保護塗料塗りにおいては、平滑面の通常塗りよりも塗布量が増加し、耐候性能が向上すること、一方、平滑面に厚塗りして単に塗布量を増やすだけではその効果が得られないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、木材表面の浸透性を高めるため、粗面化処理として帯鋸製材によるラフソーン(鋸目)仕上げを導入した。また、仕上げ面の算術平均粗さ(Ra)と塗装時の塗布量の関係などを明らかにした。さらに、ラフソーン後に木材保護塗料で塗装された試片を、促進耐候性試験等に供し、粗面化処理と塗布量が性能に及ぼす影響について予定通り解析を進めている。以上の通り、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
粗面化後に塗装された試片の耐候性試験を継続し、長期耐候性能の発現状況を評価することにより、木材の表面浸透性が塗装耐候性の発現と向上に及ぼす効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
促進耐候性試験機の効率的な運転や供給水の適切な管理により、人工雨水用の水フィルター等消耗品の支出を抑制できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
粗面化処理の効果によって塗装試片の耐候性が予想以上に高まったことから、促進耐候性試験時間を延長する必要があるため、人工太陽光用のランプ購入等に使用する。
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