研究実績の概要 |
構造用単板積層材(寸法105×105×2200mm、日本農林規格に定めるB種、60E相当)、並びに、製材(寸法105×105×2200mm、スギ材)を試験体として、恒湿環境下(標準状態:温度20℃,湿度65%)と湿度変動環境下(①20℃,RH65%[10時間]、②20℃,RH65%→20℃,RH90%[2時間]、③20℃,RH90%[10時間]、④20℃,RH90%→20℃,RH65%[2時間]、以下①から④の繰り返し)において長期荷重載荷試験を継続して実施し、試験体のクリープ変形量と試験体がクリープ破壊するまでの時間を継続して測定した。 試験の結果より、両材ともにクリープ変形は、湿度変動環境下において試験を行った試験体の方が恒湿環境下において試験を行った試験体よりも大きくなることを確認した。また、試験体がクリープ破壊に至る時間は、湿度変動環境下において試験を行った試験体の方が短くなることを確認した。さらに、クリープ変形やクリープ破壊に及ぼす湿度変動の影響に関して、実大材は無欠点小試験片に比べてその影響が少ないことを再確認した。 一方、昨年度までに作成した粘弾性モデルを用いたクリープ破壊現象に対するモデルを用いて、コンピュータシミュレーションを行い、水分作用を受ける製材と構造用単板積層材の実大材がクリープ破壊に至る過程を予測した。両環境下ともに試験結果の傾向を概ね予測することができ、提案する手法により、両環境下における実大の木質材料のクリープ変形とクリープ破壊の傾向を概ね推定することができることを確認した。一方、破壊に至る時間の絶対値については、推定値が実験値の約半分と求まったことから、水分状態が変動する木質材料の弾性係数及び粘性係数に関する知見を実験等により蓄積することが今後の課題として残された。
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