研究課題
一作年度までのEucalanidae科における再生産(卵生産)戦略の解析結果から、顕著なSeasonal OVMを行う種は「小卵多産」のr-戦略者であり、通年表層に分布する熱帯・亜熱帯性表層種は「大卵小産」のK-戦略者であることが明らかとなっている。昨年度は、同科で卵サイズと卵生産のデータが得られていなかった2種について、追加の採集と飼育実験を行った。さらに、Eucalanidae科と同様、科内でSeasonal OVM種と表層性種の双方が存在するCalanidae科に関しても解析を実施した。その結果、生活史戦略と卵サイズ、卵生産の間には、上記と類似した傾向が認められたことから、本研究で明らかとなったEucalanidae科の傾向は、同科特有のもではなく、浮遊性カイアシ類全般に適応可能である可能性を示唆するものと考えられた。また、一昨年度実施した横浜国立大学臨海環境センターに保存されている動物プランクトンのモニタリング試料の解析を継続し、昨年度は、Eucalanus californicusの季節的出現消長の経年変化について、2015年の試料を解析することに加えて、本種の飼育実験を行い、表層での産卵の確認と卵生産速度の測定を行った。その結果、昨年度の本種の春季表層への出現傾向は、一昨年度と同様、表層での餌環境が安定せず、出現期間が長くなる傾向を示した。上記の傾向は、卵生産速度の解析結果からも支持され、2014年度実験結果や他海域での結果と比較して低い値であったことも明らかとなった。
3: やや遅れている
飼育実験およびモニタリング試料の解析に関してもほぼ予定どおり実施することができたものの、学内外の委員会等の業務が増加し、研究成果の公表に遅れが生じている。
E. californicusを対象としたモニタリング試料の解析については、過去の試料がまだ10年分以上あるため、本年度中は可能な限り解析を続ける予定であるが、他の実験と試料の解析については、ほぼ完了したため、これらまでに得られた研究成果について、学会発表を行い、さらに投稿論文を作成し国際誌に投稿し公表する予定である。
昨年度から今年度にかけて、当初予定とは異なり、学内の各種委員会業務に加えて、学外の学会評議員や学術雑誌の編集委員を引き受けることとなり、研究成果の解析とその公表の準備に遅延が発生したため、旅費と論文投稿用に確保していた予算額と実際の使用額に差が生じた。
関係する学会等での研究成果公表ための旅費と研究論文の投稿費用(英文校閲等を含め)に充てる予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
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