研究課題
渦鞭毛藻Dinophysis属の中には下痢性貝毒を産生し,二枚貝類を毒化させる有毒種がいることが知られている。それら有毒種の中でD. acuminataやD. fortiiをはじめとする混合栄養種では,これまでの培養実験により,いずれの種においても繊毛虫Mesodinium rubrumを餌としていることが明らかにされている。しかし,自然界においては,Dinophysis属とM. rubrumとの出現関係について調べられた例はほとんどない。そこで,本研究課題では,高頻度の現場調査を行うとともに,現場から得られたDinohysis属細胞の食胞内に残存する遺伝子を解析して餌生物の特定を試みる。これらにより餌生物との関係からDinophysis属の発生機構を解明することを目指した。平成27年度も三重県津市白塚漁港内に設けた調査点において採水を行った。得られた海水からD. acuminataを単離し,細胞内の食胞に残存する餌生物の遺伝子を,制限酵素を用いた処理方法で抽出・解析を行ったところ,これまでと同様にM. rubrumの遺伝子が検出された。さらに,現場に出現した従属栄養性の有毒種であるD. rotundataの食胞中の遺伝子も同様の方法で解析したところ,今年度は,これまで確認されていたM rubrumと数種の繊毛虫遺伝子以外の繊毛虫遺伝子もいくつか検出された。このように,現場におけるDinohysis属の餌生物が広く判明した。また平成27年度も,同調査点において行った高頻度調査により得た試水を検鏡し,D. acuminataならびにD. rotundataと,それぞれ食胞中の遺伝子解析の結果明らかとなった餌生物との間の数的関係を時系列で調べたところ,どちらのDinohysis属においても餌生物との間には確かに捕食ー被捕食の動的関係があることが示唆された。
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日本海水学会誌
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10.1016/j.hal.2015.07.009