研究課題/領域番号 |
25450257
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
上田 拓史 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (00128472)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 動物プランクトン / 肉食性 / カイアシ類 / ヤムシ / 生態 |
研究概要 |
土佐湾中央仁淀川河口付近,陸棚縁辺,その中間点の3定点にて平成18年から継続している開閉式プランクトンネット(網目0.1mmm)を使った層別鉛直採集による動物プランクトン調査を毎月実施した。また,20~21年のサンプルを分析し,研究対象としている優占肉食性動物プランクトン(オンケア科カイアシ類,コリケウス科カイアシ類,ヤムシ類)の種組成や密度,分布を明らかにした。その結果,オンケア科はOncaea venusta,コリケウス科はCorycaeus affinis,ヤムシ類はZonosagitta nagaeが優占すること,各分類群とも50m以浅に多いこと,主要種の季節変化など,経年データを解析して行く上での基本的情報を得ることができた。 容量50Lのトラップ型採集器を用いた微細分布調査は平成25年度に土佐湾,浦ノ内湾で計4度実施した。その結果,肉食性動物プランクトンの中で最も密度が高いオンケア科のノープリウスだけが定量分析できる採集個体数があり,クロロフィル濃度との有意な正の相関が認められた。 ヤムシ類については,その食性を調べるために月例採集調査の際に帰港直前にプランクトンネットで採集した生体標本を持ち帰り,実験室内で直ちに水槽に移し観察を行った。最近,ヤムシ類は溶存有機物を栄養源として利用しているのではないかという仮説が出されているが,それを示唆するような水を飲み込む行動の録画を撮ることできた。しかし水槽内でヤムシが他の動物プランクトンを捕食する行動は一度も観察されなかった。 学会発表については,ヤムシ類の季節変動と湾内水平鉛直分布についてPlankton & Benthos Research誌に投稿中で,優占種Zonosagitta nagaeの個体群生態について国内学会で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の到達目標は,優占肉食性動物プランクトンが魚卵や仔稚魚を補食する可能性がある一方で,稚魚の餌となることも考えられることから,その基本的な生態情報を得ること,水温や黒潮との関係からその個体群の変動要因を考察すること,および土佐湾の代表的水産資源であるイワシ類の仔魚(シラス)漁獲統計との相関を明らかにすることである。そのため,平成18年から26年度までの9年間の動物プランクトン試料の検鏡分析が本研究の根幹的作業になる。3年の研究期間から計算すると年に3年分の試料分析は必要になる。25年度に分析した試料は2年分であるが,研究初年度に必要になる種の同定作業等や分析の試行錯誤を考慮すれば妥当な進捗状況であると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年は毎月の動物プランクトン調査を継続し,過去のサンプルの分析に力を注ぐ。 ヤムシ優占種Zonosagitta nagaeについてこれまでの分析結果から産卵個体群が採集されないという疑問が生じている。ヤムシについては,プランクトンネットでは採集できない底表面に群がる個体群があることが報告されており,それが産卵個体群ではないかと想定して,25年に購入した遠隔走査型水中ビデオ装置を使ってその探索を行う。 平成27年度は残った試料の分析に全力を注ぎ,得られた肉食性動物プランクトンの経年データと黒潮データやシラス漁獲統計データとの相関を調べる。また,その結果の学術誌への投稿するための執筆に力を注ぐ。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予定していた2回の研究成果発表経費を1回にしたため約1回分の経費が残った。 分析が必要な試料が多いため,試料分析の費用に充当する予定である。
|