研究実績の概要 |
平成27年度は、平成25年度夏季に実施した現地調査の解析結果に基づき、巻き上げに伴う底泥からのPO4供給量及び供給源(PO4が溶存態か吸着態由来のものか)を定量的に評価するため巻き上げ実験を行った。まず、予備実験として六角川河口域で採泥した底泥試料の乾燥泥(2.5g)を100mlの三角フラスコに入れ懸濁実験を行った。その結果、実験終了時における懸濁水中のPO4-P濃度は、約1.1mg/l増加した。このことから、底泥土粒子に吸着しているPO4-P(吸着態PO4-P)は、巻き上げ(物理的撹拌)によって、懸濁水中に脱離することが確認された。次に、対象とする河口浅海域の水質環境を考慮し、SS濃度(巻き上げ量)と塩分(10,20,30‰)を段階的にコントロールして底泥の巻き上げ実験を行った。その結果、(1).SS濃度が2000~4000mg/lの高濁度層において、吸着態由来のPO4-P現存量は、懸濁水中のPO4-P現存量の70%程度を占めた。また、高濁度層における吸着態由来のPO4-P現存量は、巻き上げられた土粒子の吸着態PO4-Pの13~24%が懸濁水中に脱離したものであることが実験的に明らかにされた。(2).吸着態PO4-Pの脱離量は、巻き上げ量(SS濃度)の増加に伴い指数関数的に増加した。(3). 巻き上げ実験を通して、塩分の変化に伴う吸着態PO4-P脱離量の変化は見られなかった。以上の結果より、底泥の巻き上げに伴う懸濁層内のPO4-P濃度の変動には、巻き上げられた底泥土粒子から脱離した吸着態由来のPO4-Pの供給が大きく寄与し、吸着態PO4-Pの脱離量は、巻き上げ量(SS濃度)に大きく依存することが明らかにされた。
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