研究課題/領域番号 |
25450259
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
片野 俊也 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (00509820)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 冬季珪藻赤潮 / 有明海 / 硝酸塩センサー / Eucampia zodiacus / Skeletonema属 / ノリの色落ち |
研究実績の概要 |
海苔養殖において、海苔と栄養塩の競争者である珪藻が赤潮を起こすことは、栄養塩不足によって、海苔の色落ちがおきるため深刻な問題である。そこで,有明海で常態化している冬季珪藻赤潮の発達過程を明らかにすることを目的として研究を進めている.珪藻赤潮の発達に関しては、ブルームの開始(きっかけ)とブルームの規模の2点に着目している.ブルームの「きっかけ」については,佐賀大学観測タワーでの連続モニタリングとタワーを中心とする潮流の流軸に沿った断面観測による解析をおこなっている.現在までに,小潮時の底層付近でクロロフィルが高濃度になり,これが大潮時に鉛直混合によって海面に運ばれる様子が確認出来ている.ただし,いつの大潮で赤潮化するかは,いまだ不明である.光環境,成層の程度,栄養塩などに着目したデータ解析を進めている.栄養塩動態については,硝酸塩センサーを購入し,室内試験,野外試験を経て,今年度は現場繋留試験を行ったところである.12月より4月上旬まで,の繋留観測に成功した.繋留観測時のデータの転送,ウェブへのリアルタイム公開のためのプログラム開発を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,1月から3月にかけて,有明海の断面観測を8回行った.同時に,タワーでのモニタリングも継続した.昨年度は,Eucampia zodiacusの最高細胞密度は,2月26日に502 cells/mlに達したが,それ以上にはならず,この種による大規模な赤潮は発生しなかった.一方,本年は有明海においてはSkeletonema属による赤潮が発生した.タワーを中心とする本観測範囲においても,Skeletonema属は,比較的高い細胞密度で推移した(現在計数中). また,硝酸塩濃度の高頻度観測については,一昨年度には,紫外域の吸光度を利用した硝酸塩センサーを購入し,室内実験,現場試験を行った結果,CTDとの併用により精度良くデータを取得できるようになった.硝酸塩センサーは将来的には観測タワーに繋留して,ノリ養殖漁師のためにもデータをリアルタイムで公開していく予定である.そのため昨年度は,そのための前段階として,タワーでの繋留観測のためのソーラーパネル,バッテリー等の設備を整え,実際に繋留観測を12月から4月までおこなった.観測は無事終了し,現在はデータのチェックを行っている段階である.その他,データのリアルタイム公開に必要なプログラムの一部(受信データから作図し,インターネットにリアルタイム公開するプログラム)開発を行った.
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今後の研究の推進方策 |
現在は,3月末までに取れた硝酸塩濃度,及びタワーでの観測データの解析を行うとともに,得られた植物プランクトン試料の計数を行っている.これらについて,分析を進めていく.なお,今年度も引き続き佐賀大学観測タワーでのモニタリング,タワーを含む現場断面観測を行う予定である.ただし,断面観測は,研究機関末期でもあり,頻度は下げて行うこととする.一方,硝酸塩センサーについては,3G回線を利用したデータ転送設備を整備し,佐賀大学内の佐賀大学観測タワーのウェブ公開システムに追加して,硝酸塩センサーからのデータから,作図し,ウェブ上にアップロードするシステムを完成させる.12月から3月まで,硝酸塩センサーによる繋留観測を行うと共に,ウェブ上へのリアルタイム公開を行う予定である. これらにより,冬季珪藻赤潮の発達プロセスについて,その初期発達に及ぼす環境要因として,光,成層強度,栄養塩濃度について総合的に解析を進め,冬季珪藻赤潮の発達プロセスの一端を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度にも,調査のための旅費を使用するが,金額が採択当初よりも研究代表者の所属が佐賀大学から東京海洋大学に異動し,必要金額が多くなった.9996円残ったが,無理に使用せずに持ち越した.
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次年度使用額の使用計画 |
旅費の一部に充当する.
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