研究課題/領域番号 |
25450261
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
近藤 竜二 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (30244528)
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研究分担者 |
中野 伸一 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (50270723)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鞭毛虫 / 嫌気 / 細菌捕食 / 密度成層湖 |
研究概要 |
部分循環湖である水月湖から、集積培養ならびにキャピラリーアイソレーション法を用いて3株の細菌捕食性・嫌気性微小鞭毛虫の分離培養に成功した。各株の18S rDNAの塩基配列を決定し、分子同定を行ったところ、いずれも既存の種とは相同性が低く、新種の可能性が示された。 このうち1株については、電子顕微鏡を用いて微細構造を詳しく観察したところ、Wobblia属の新種であることが明らかとなった。また、このWobblia属の株については、Arcobacter sp.との二者培養系を確立することができた。この株は通性嫌気性で、酸素のある条件下でも増殖がかのうであった。増殖の温度範囲は10~30℃で、至適温度は25℃であった。至適塩分濃度は7.8 psuで、全く塩分を含まない培地なら。びに海水の塩分濃度以上で増殖しなかった。好気的な条件でも嫌気的な条件でも細菌捕食は認められたが、その活性は好気的な条件のほうが高かった。 他の2株は偏性嫌気性で、それぞれMastigamoeba scholaiaおよびPseudotrichomonas keiliniにもっとも近縁であった。 18S rDNAの塩基配列をもとに各株に特異的な遺伝子プローブの設計を行った。既存のDNAデータベースと比較したところ、各株に特異的な配列が2か所以上存在することから、この領域にPCRプライマーあるいはFISHプローブを作成できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の本研究の目的は水月湖の嫌気環境から細菌捕食性鞭毛虫を分離培養し、増殖と細菌捕食に関する生理学的知見を得ることであった。嫌気性の鞭毛虫の培養は極めて難しいが、嫌気性細菌の分培養法を応用して集積培養を可能とした。また、鞭毛虫の分離法で用いられるキャピラリーアイソレーション法を応用して、種類の異なる3つの嫌気性鞭毛虫のクローン株を樹立することに成功した。 得られたクローン株のうち1株については、鞭毛虫の餌となる細菌を1種類だけにした二者培養系を確立し、増殖の至適温度、至適塩分濃度を明らかにした。細菌捕食活性を調べたところ、嫌気条件下よりも好気的な条件での活性が高いことを明らかにした。 平成26年度に予定していた鞭毛虫株の系統学的解析も、平成25年度中に完了した。
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今後の研究の推進方策 |
得られた3株のうち偏性嫌気性の2株について、単一種の細菌との二者培養系を確立したうえで、増殖生理と細菌捕食活性を明らかにする。また、3株の有機物分解特性を明らかにするために、蛍光人工基質を用いた各種酵素活性を明らかにする。 平成25年度で設計した遺伝子プローブの特異性を、培養細胞を用いて調べるとともにFISHあるいはPCRの最適条件を検討する。 最終年度には遺伝子プローブを用いて、水月湖水柱の嫌気性鞭毛虫の分布および動態を明らかにする、
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度で予定していた研究補助および消耗品の一部を執行しなくても、当初の計画通り研究が進んだ。この予算に関しては、次年度に使用予定である遺伝子プローブの作成ならびに分子生物学用試薬の購入、および研究補助の予算に充てる予定である。 有機物分解活性の測定に用いる蛍光人工基質および遺伝子プローブの作成・検証のための分子生物学用試薬を購入する。また、京都大学と福井県立大学の両所で実験を実施する必要があり、このための旅費および実験(調査)補助の人件費として使用する。
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