研究課題
平成27年度では、2つの研究を並行して行った。その概要は以下の通りである。1.これまでの研究から、ストレス状態に置いた宿主魚類では腸内のVibrio科細菌が増加するため、日和見感染症であるVibrio病を発症しやすいことが示唆されてきた。そこで本研究では、種々の密度および水温で飼育したトラフグ稚魚の腸管内および飼育水中のVibrio科細菌の動態を定量PCR法や全菌数の測定などを用いて解析した。その結果、個体数の少ない水槽より多い水槽の方がVibrio科細菌数はわずかではあったが増加する傾向が見られた。しかし、20~30℃の温度で飼育したトラフグでは腸内のVibrio科細菌は顕著には増加しなかった。このことから、トラフグ稚魚では個体密度の方が水温よりもストレスを感じやすいことなどが示唆された。2.トラフグなどのように生殖時期が1年の特定の時期に限られた魚種を研究対象にした場合、同じサイズの魚類を一年を通じて確保することが困難であるため、実験を実施する時期が限定されることが多い。そこで、給餌している飼料と魚から採取した腸管内容物を混合して調製したスラリーをインキュベーター内で培養し、細菌群集の動態を解析することで、このシステムがトラフグ腸内細菌叢のモデル系となり得るかどうかを検討した。その結果、トラフグの腸内容物から多く検出されたAlphaproteobacteria綱が1日目以降検出されず、1日目に多く検出されたGammaproteobacteria綱も培養日数を経るごとに割合が減少し,代わりに他綱の細菌の割合が増加していく傾向が見られた。また、使用した配合飼料に高密度で存在するGammaproteobacteria綱の細菌はほとんど分離することができなかった。このことから、今回のようなスラリーでは魚類の腸内細菌叢を再現することは難しいことが示唆された。
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Mitochondrial DNA
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