研究課題
基盤研究(C)
本申請課題では,海洋から得られたメタン酸化細菌を含む,メタンのみで増殖する微生物の3者培養系の微生物間共生関係の解明を目的とし,ゲノム解析ならびに培養試験を実施する。3者培養系の中で,メタン酸化細菌S8 株とメタノール酸化細菌Gela4 株の2者の密接な関係が示唆されたことから,これらに集中して解析した。Gela4株については,イルミナによるペアエンド法解析ならびにウォーキング解析によるギャップクロージングを試み,3,424,964bpの完全ゲノムデータを取得することができた。S8株については,イルミナによるペアエンド法解析に加えPacBioシークエンサーによる解析を追加した(まだ完全ゲノムには至っていない)。これら最新のゲノム情報を解析した結果,Gela4株ではメタノール酸化酵素遺伝子 (mxaF)が存在するが,メタン酸化酵素遺伝子は存在しないことが確認され,共生培養系ではメタン酸化細菌がメタンから作り出したメタノールを利用していると考えられた。また,serine hydroxymethyltransferase遺伝子は存在していたものの,3-hexulose-6-phosphate synthase遺伝子は存在せず,セリン経路を用いたC1化合物の資化を行っていることが明らかになった。また,遺伝子解析の結果と培養試験の結果からGela4株は新属と考えられたことから,Methyloceanibacter caenitepidi として提案を行った (Takeuchi et al., 2014)。S8株では,メタン酸化酵素遺伝子(pmoA, mmoX)が確認された。メタン酸化酵素遺伝子や16S rRNA 遺伝子の解析結果ならびに培養試験の結果からS8株はMethylocaldum属の新種と考えられたことから新種提案を行っている(Takeuchi et al. リバイズ中)。
2: おおむね順調に進展している
対象微生物のうち,1株については完全ゲノム情報の取得に成功した。また,もう1株についても完成度の高いドラフトゲノム情報を得ることができている。また,生理学的試験の結果をもとに,これら2株の微生物について,新属,新種記載論文を執筆し,1件は掲載済,もう1件もリバイズ中であり,近日中に受理される予定である。
今後は各微生物の単独増殖時,共生増殖時についてトランスクリプトーム解析を実施し,発現している遺伝子の差を確認する予定である。これによって,共生時に特異的に発現しているシステムを特定し,共生関係を解明することができると考えている。
今年度予定していたゲノム解析が,連携研究者の協力もあり,予定より小額で実施することができた。当初予定ではゲノム解析のみ実施予定としていたが,微生物間共生関係の解明には発現遺伝子を解析するトランスクリプトーム解析を加えることが非常に有力である。そこで,トランスクリプトーム解析の実施を追加する計画である。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Int J Syst Evol Microbiol
巻: 64 ページ: 462-468
10.1099/ijs.0.053397-0. Epub 2013 Oct 4.