研究課題/領域番号 |
25450266
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
古島 靖夫 独立行政法人海洋研究開発機構, 海底資源研究開発センター, 技術副主幹 (90359159)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蛍光撮影技術 / 海洋生物の蛍光 / 蛍光スペクトル / 海洋生物マッピング / 多波長励起光 / 多波長カットフィルター / サンゴ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,海洋生物(サンゴ)が発する蛍光を面的に画像・映像として捉え,海洋生物マッピングの基礎を構築することである。 平成26年度は,多波長励起光と多波長カットフィルターを装備したハンディマルチ蛍光カメラと小型ROV 搭載用のマルチ蛍光カメラユニットの開発および製作を行った。多波長励起光の光源は,開発当初はフィルター交換式を検討していたが,海中での操作性や小型ROVへの装備を鑑みて,6種類の波長の異なるLEDライトを励起光源とした(昨年度得た各種海洋生物が発する蛍光スペクトルのデータを基にLEDライトを作成)。これにより,6種の励起光源各種の強弱や光源の変更が容易に操作できるユニットが開発できた。ハンディマルチ蛍光カメラ(アクリル製の水中ハウジング:耐圧30m)では,カットフィルターアタッチメントによって手動でフィルターを変えることにより,多波長励起による海洋生物の蛍光撮影が可能になった。一方,小型ROV 搭載用のマルチ蛍光カメラユニットでは,励起光光源はハンディマルチ蛍光カメラのLEDライトを使用するが,多波長カットフィルターのアタッチメント装備に工夫が必要となり開発・製作を継続している。 ハンディマルチ蛍光カメラに用いた励起光と各フィルターを組合わせた蛍光撮影試験は,国際海洋環境情報センターと筑波大学下田臨海実験センターの海洋生物(サンゴ等)を対象に実施した。その結果,波長の違いによる海洋生物の蛍光撮影では,蛍光を発する部位波長によって異なる等の結果(画像)を得ることができた。 また,サンゴ礁学会(第17回)において「蛍光撮影技術を生かした海洋生物のイメージングとモニタリングII」と言うテーマで自由集会を主催した。非破壊の光学的なイメージングを基盤にした本研究で開発中の蛍光撮影装置の有効性や,海洋生物の蛍光について多分野にわたる研究者との議論の場を持った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小型ROV用マルチ蛍光カメラユニットの開発では,ハンディマルチ蛍光カメラの多波長励起光を使用するが,同時に装備する多波長カットフィルターのアタッチメントユニットに工夫が必要となり,開発・製作を継続している。これにともない,平成26年度計画していた,海洋研究開発機構(横須賀本部)の岸壁における小型ROVによる蛍光撮影試験は,平成27年度の前期に行うこととした。また,平成26年度に取得した各海洋生物の蛍光スペクトルの取りまとめ(公表)がやや遅れている。しかしながら,ハンディマルチ蛍光カメラの開発および蛍光撮影試験が完了していることを鑑みると,概ね本研究開発は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,ハンディマルチ蛍光カメラと小型ROV 用マルチ蛍光カメラユニットを用いた実海域撮影試験と海洋生物マッピング解析の基盤構築を前期に実施する。後期は,本研究の研究成果まとめを行う。 小型ROV 用マルチ蛍光カメラユニットは8月までに完成させ,その後,ハンディマルチ蛍光カメラと併せて蛍光撮影試験を実施する。具体的には,詳細な海底地形が分かっている海域においてモザイク蛍光撮影を波長帯毎に行いマッピングの方法を探る。また,多種の海洋生物の蛍光撮影を行い,その蛍光画像から生死の判別等が可能か否かを検討する。蛍光撮影試験は,当初は石西礁湖(沖縄県石垣島)を想定していたが,複数回にわたる撮影試験を実施しデータ量を増やした方が装置の開発に有効であると考え,国際海洋環境情報センターあるいは筑波大学下田臨海実験センター付近の海域で実施する予定である。 研究成果については,ハンディマルチ蛍光カメラおよび小型ROV 用マルチ蛍光カメラユニットの開発,それを使った現場における蛍光撮影試験,蛍光画像を用いた海洋生物マッピングの可能性等について学会(サンゴ礁学会等)や誌上を通じて公表することを考えている。
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