本研究の目的は,海洋生物(サンゴなど)が発する蛍光を面的に画像・映像として捉え,海洋生物マッピングの基礎を構築することである。最終年度にあたる平成27年度は,昨年度開発した多波長励起による簡便なハンディマルチ蛍光撮影装置を用いて,実海域における海洋生物の蛍光撮影試験を実施し,海洋生物マッピングへの可能性を検討した。 平成27年度当初は,昨年度の撮影試験時に得られた装置の操作性の不具合(カットフィルターアタッチメントの取付など)を改良した。その後,筑波大学下田臨海実験センターのSylvain Agostini助教の観測定点,および屋外飼育水槽の海洋生物(サンゴや海藻類)を対象に,ハンディマルチ蛍光撮影装置による撮影試験とスペクトル計測を行った。 励起光とカットフィルターを可変式にすることにより,従来の蛍光撮影装置で撮影できた波長と異なる波長での蛍光撮影が可能となった。また,励起光を可変式にすることにより,GFPによる蛍光,クロロフィルによる蛍光や色素などの撮影が可能になることが示唆された。さらに,蛍光の役割や生理状態との関係などが明らかになれば,本装置で得られた結果は,より効果的な海域管理や環境影響評価に繋げられるのではないかと考察できた。これらの成果は,サンゴ礁学会(第18回)にて報告を行った。さらに,13th International Coral Reef Symposiumにおいて公表予定である(2016年6月)。 装置開発と併せて,我々の蛍光研究を発展させるために,昨年と同様にサンゴ礁学会(第18回)において「蛍光撮影技術を生かした海洋生物のイメージングとモニタリングIII」と言うテーマで自由集会を主催した。非破壊の光学的なイメージング手法として本研究で開発した多波長励起による蛍光撮影装置の有効性や,海洋生物の蛍光について多分野にわたる研究者との議論の場を持った。
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