研究課題/領域番号 |
25450267
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
吉田 吾郎 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, グループ長 (40371968)
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研究分担者 |
加藤 亜記 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (00452962)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 気候変動 / 水温上昇 / 藻場生態系 / 磯焼け / コンブ目海藻 / ホンダワラ類 / 温帯性種 / 亜熱帯性種 |
研究概要 |
日本の暖流域沿岸では、近年「磯焼け」に特徴づけられる藻場の変化が進行しており、沿岸域の生態系と漁業生産等に及ぼす影響が懸念されている。この背景には、継続して上昇しつつある水温との関連が考えられるが、藻場の変化との因果関係は不明である。本研究では、比較的小さい地理空間に明瞭な水温勾配(冬季で最大8℃程度)のみられる瀬戸内海と太平洋域の間に介在する豊後水道部において、水温等環境のゆらぎと藻場生態系の応答機構について集約的な調査を行い、藻場の変化と水温上昇の因果関係を明らかにする。これを通じて、近年の藻場の変化の機構解明と、気候変動による将来的な変化予測を可能とする知見を集積する。 平成25年度は、宇和海(豊後水道東部の愛媛県側)の南北方向に7か所の調査地点を設定し、藻場のライントランセクト調査と水温自記記録計の設置等を実施した。調査地点は北から三崎(St.1)、伊方(St.2)、明浜(西予市;St.3)、北灘(宇和島市;St.4)、内海(愛南町;St.5)、西海(同;St.6)、東海(同;St.7)であり、南北距離は65km、それぞれの点間は10~20km程度離れている。 藻場の主要構成種は、宇和海北部のSt.1、St.2では温帯性のコンブ目海藻クロメと温帯性ホンダワラ類ノコギリモク等であり、瀬戸内海と同様であった。しかし、St.3の藻場ではクロメが欠落、さらにSt.4では温帯性ホンダワラ類が欠落し、マクサ等の小型海藻が優占した。St.5以南では漸深帯上部で熱帯性ホンダワラ類のフタエモクが、それ以深ではサンゴ類をともなう磯焼け的景観が出現した。このように宇和海では北部と南部で藻場が劇的に変化し、北部の藻場でもサンゴ類やガンガゼ等の入植が一部にみられた。本結果を1990年代初頭の環境省の藻場調査結果と比較すると、特に温帯性のクロメ、ホンダワラ類の南限が大幅に北上していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の調査結果をもとに、藻場が劇的に変化した調査点間(St.2~St.5)にさらに調査点(第2次調査点)を設定し、環境省の1990年代初頭の調査からの変化の実態を精査するとともに、藻場の変化の変曲点の実態について明らかにする。平成25年度の調査点も含めて環境要因のモニタリングを継続し、水温の変動パターンと藻場の様相との関係について解析を進める。また、藻場を構成する主要種について、温帯性種、熱帯性種のそれぞれで地点間の移植実験を行い、温度環境がこれらの海藻の生産力に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
藻場の現地調査のための用船に係る費用が想定額を下回り、調査経費が総額として低く抑えられたため。 引き続き現地でのデータ取得を継続・強化するため、用船費などの調査経費に充当する。
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