近年我が国沿岸域で進行する水温上昇を背景とする藻場生態系の変化(磯焼けの拡大)の機構解明のため、瀬戸内海と黒潮流域に介在し、比較的小さな海域に明瞭かつコンパクトな水温勾配がみられる宇和海で研究を実施した。この水温勾配に沿って、藻場の海藻植生はクロメやホンダワラ類等による温帯性のものから、磯焼け域の一部に群落を形成する熱帯性ホンダワラ類によるものへと劇的に変貌した。また、同海域では1990年代初頭と比較し上記の温帯性海藻の南限が大幅に北上するとともに、熱帯性海藻の分布が拡大していた。現地実験から、この藻場生態系の変化には水温上昇にともなう植食動物の採食活動の変化が作用していることが示唆された。
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