研究課題/領域番号 |
25450272
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀和 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (90432062)
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研究分担者 |
田中 次郎 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (30167499)
南雲 保 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (70120706)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分類学 / 付着珪藻 / アマモ場 / 形態 / 多様性 |
研究概要 |
本研究は,次の5つを研究活動の柱としている。1) Monitoring,2 )Information,3) Application,4) Communication及び5) Education。この中で本研究期間内では1)と2)の完成を目標とした。平成25年度は1)の(1)モニタリングフィールドの選定,(2)珪藻の季節消長の動態把握,(3)群集主構成種の生活環の把握を目的とし,下記研究課題を遂行した。その成果は平成25-26年の国内外の学会及び論文誌に公表及び予定である。 1. アマモ場及びその周辺環境中の出現する付着珪藻相の解明 新潟県佐渡島産アマモ葉上からは4月に4属10種,11月に13属25種,タチアマモ葉上からは4月に7属14種,11月に12属25種を確認した。種組成の検討結果,共通点としてコメツブケイソウ属の割合が高いこと,春季に比べ秋季は出現種の多様性が増加したことが明らかになった。これはアマモ場構成付着珪藻の特徴を示す結果といえる。東京湾汽水域岸壁上の調査からは,潮位に対応した付着珪藻の帯状分布が形成されることを発見し,汽水域潮間帯で特徴的な指標性を示す付着珪藻を見いだした。沖縄県西表島沿岸の藻場砂地上珪藻相調査からは,主要出現種の形態学的知見を得た。 2. アマモ場及びその周辺環境中の出現する付着珪藻の季節消長等の動態と生活環の解明 東京湾産付着珪藻Melosira moniliformisとPleurosira laevisの天然での増大胞子形成の動態を継続的に調査し,両種の増大胞子の形成時期や期間,頻度の相違を発見した。これは同所的・同ニッチをもつ両種の生育戦略の相違を示唆するものと考える。また底生珪藻Fallacia属数種を天然から採集し,単離培養に成功,継続的な培養観察により生活環と増大胞子構造の解明し,本属の系統分類学的検討に重要な資料を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画において,(1)モニタリングフィールドの選定,(2)珪藻の季節消長等の動態把握,及び(3)群集主構成種の生活環の把握,に関して,ほぼ目標達成が見込められる結果が得られた。具体的には,(1)は,新潟県を中心とした日本海沿岸域と沖縄県南西諸島沿岸域が,これまでに得られている資料と比較し得るフィールドとして選定された。(2)は,珪藻の季節消長や付着戦略等の生態的特性のモデル化を示唆する資料を得た。(3) は,藻場周辺環境に生育するの珪藻の単離,培養に成功し,生活環に関する資料を得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に得られた成果をもとにして,さらに平成26年度は(1) 前年度に引き続き,日本海沿岸と南西諸島沿岸でのモニタリングフィールドの選定のために,各沿岸に生育する海草(アマモ)類を採集する。これをもとに葉上の付着珪藻相の概要を把握し(フロラ研究),本研究の目的と合致するサイトであるかの検討を行う。(2) フィールド探査と同時に採集した試料をもとに,光学及び高分解能走査型・透過型電子顕微鏡観察による形態学的情報を収集し,分類学的アプローチにより出現種及びそれらの付着様式を把握し,アマモ場における付着珪藻群集のより詳細な分類学的及び生態学的情報を得る。(3) 照明付き藻類培養庫を用いて,継続的なフロラ研究により知り得た群集の主構成種の単種培養を行い,その生殖過程と生活環を把握する。(4) パーソナルコンピューターとデータベースソフトを用いて,継続的なフロラ研究や動態調査より知り得た群集の主構成種の分類学的及び生態学的資料のデータベース化に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた冬季調査が天候不順により,それに充てていた調査が実施できなかったため。 前年度予定していた調査地を本年度分調査として実施する予定であり,前年度未使用分はそれに充てる予定である。
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