研究概要 |
Hsp70およびHsp90に属する数種アイソフォームのウイルス学的重要性を調べる目的で、各アイソフォーム遺伝子をメダカ培養細胞内で過剰発現させ、ベータノダウイルスの感染増殖への影響を調べた。まず、Hsp70アイソフォーム(Hsp70-1, Hsp70-2, Hsp70-5, Hsp70-8, Hsp70-9)およびHsp90アイソフォーム(Hsp90-α1, Hsp90-α2, Hsp90-β, GRP-94, TRAP1)のcDNAを発現ベクターにクローニングした。次に、ベータノダウイルスが良好に感染増殖するOLHNI-2メダカ培養細胞に作製した各Hsp発現ベクターを導入(トランスフェクション)した後、本ウイルスを感染させた。その結果、Hsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5、Hsp90-α1、Hsp90-α2、Hsp90-βの過剰発現区でウイルス増殖レベルが1.69-3.63倍に高まった。 他方、同様の目的で、今度は各Hspアイソフォーム遺伝子の発現をsiRNAを用いて抑制(ノックダウン)し、ウイルス感染増殖への影響を調べた。まず、Hsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5、Hsp90-α1、Hsp90-α2、Hsp90-βのmRNA配列を基にsiRNA を合成した。次に、OLHNI-2細胞に各siRNAをトランスフェクションした後、本ウイルスを感染させた。その結果、全てのsiRNA処理区でウイルス増殖レベルが低下し、その程度はコントロールの0.26-0.55倍であった。 これらの結果から、Hsp70 およびHsp90 isoform のうち、Hsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5およびHsp90-α1、Hsp90-α2、Hsp90-βはベータノダウイルスの感染・増殖に関与する(宿主因子である)ことが判明した。
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