研究課題/領域番号 |
25450275
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
末永 慶寛 香川大学, 工学部, 教授 (00284349)
|
研究分担者 |
山中 稔 香川大学, 工学部, 准教授 (50264205)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 養殖生簀 / 波浪エネルギー / 動揺抑制装置 / 有用稚魚 / 生残率 |
研究実績の概要 |
魚類養殖生簀の設置してある実海域(香川県高松市屋島湾)において,生簀に取り付けるための実機実験用の複数の振動水柱を有する動揺抑制装置を製作した後,波浪データおよび振動水柱内の水位変化を観測した.また,資源生産力の向上が求められている有用魚種であるキジハタの稚魚を生簀内に放流し,一定期間畜養した後,動揺抑制装置の有無による生残率を測定した. 昨年度までに装置模型を用いて実施してきた水理実験と同様に,実海域の波浪観測データを統計解析し,入射波および生簀内におけるエネルギースペクトルを算定した.装置の有無による生簀の動揺量およびエネルギースペクトルを比較することにより,装置により吸収され波浪エネルギーを定量的に評価した結果,水理模型実験と同様に,実海域においても振動水柱による波浪エネルギーを吸収可能であることを検証した. 有用魚種であるキジハタ稚魚を生簀内に放流し,一定期間畜養した後,装置の有無による稚魚の生残率を検討した.装置を装着した実験区の生簀と対照区の装置の無い生簀において投入前後の全長(mm),体長(mm),体重(mm),肥満度の各項目について測定を行った結果,動揺抑制装置を装着した養殖生簀内の稚魚は,生簀の動揺による損傷や体色の変化も見られず,生残率が向上し,肥満度も高くなることが確認された. 生簀での稚魚の生残率に関する実験結果を基に,放流サイズに生長した稚魚を実海域に放流した後,大型魚からの捕食圧を低減させ,稚魚の歩留まりを向上させるための技術開発が求められるため,稚魚の餌場および保護・育成場を同時に提供かつ実海域放流後の生残率向上のための施設(保護シェルター)の設計も行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現地実験については,初年度の成果を基に,当初計画通りに実際に養殖生簀の設置してある実海域(計画した場所:香川県高松市屋島湾)において,生簀に取り付けるための実機実験用の複数の振動水柱を有する動揺抑制装置を製作し,計画した現地実験を行った. 実海域における波浪エネルギー吸収効率に関する定量的評価については,模型を用いて実施してきた水理実験と同様に,実海域の波浪観測データを統計解析し,入射波および生簀内におけるエネルギースペクトルを算定した.装置の有無による生簀の動揺量およびエネルギースペクトルを比較することにより,装置により吸収され波浪エネルギーを定量的に評価し,実海域においても波浪エネルギー吸収が可能であることが検証され,計画通りの研究が遂行された. 実海域(高松市屋島湾,観音寺市伊吹島地先海域)における稚魚生残率に関する定量的評価については,有用魚種であるキジハタの稚魚を生簀内に放流し,一定期間畜養した後,装置の有無による稚魚の生残率および肥満度を測定し,動揺抑制装置による稚魚の生残率向上効果を定量的に評価した.その結果,想定された成果が得られ,計画とおりの目標値を達成した. 生簀を用いた稚魚の生残率向上に関する実験結果を基に,稚魚を実海域へ放流した後に問題となっている大型魚からの捕食による歩留まりの低下を抑制するための技術(餌場・保護・育成施設)の開発に資するデータを収集できたことは,計画以上の成果となったと考える.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,対象海域での波浪観測,稚魚の生残率に関するデータ等を基に,内湾域における動揺速成装置の仕様を決定する.また,カサゴ,メバル,キジハタ等の岩礁性魚種は瀬戸内海地域でブランド化が推進されている有用魚種でもあることから,特にこれらの魚種に応じた装置の仕様および生簀と装置が一体化された新たな養殖施設開発についても検討を行う.また,対象海域の海象条件に応じて,エネルギースペクトルを算定し,動揺抑制装置の規模,振動水柱長さ,最適本数,管口幅等が決定できる波浪エネルギー吸収システムを構築する.
|