シロザケを例とした魚類の環境履歴推定法の開発

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25450279
• 研究機関: 北里大学
• 研究代表者: 林崎 健一 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (80208636)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: 安定同位体比 / 餌履歴 / 水温履歴 / シロザケ / レジームシフト / 鱗 / ニジマス

研究実績の概要

本年度は、（１）昨年度に引き続き岩手県南部の３河川において現場調査を行い、シロザケの鱗等分析用サンプルを得た。（２）過去に採取された鱗の標本から、鱗の年輪構造が単純であると考えられる若齢魚を用いて安定同位体比の測定・解析を行った。３歳魚を中心として1975年から2005年に岩手県南河川に回帰したシロザケの鱗を分析に供し、炭素・窒素安定同位体比を計測した。その結果、1990年代後半から炭素・窒素安定同位体比ともに値の低下が見られた。なかでも３歳魚３年目の低下が顕著であった。この海洋生活年にはベーリング海からアラスカ湾を生息域とした後、母川へ回帰するものと考えられる。このことから、1990年代後半からシロザケの主要な摂餌域であるベーリング海からアラスカ湾において餌環境の変化が起こった可能性を示唆するものと考えられた。（３）安定同位体比による水温推定法に関しては、分析装置の不調や試料調製による収量不足もあり分析数は少数にとどまった。（４）ヤマメとイワナを用いて飼育実験を行った。餌の切り替え実験を行うことにより、魚の組織ごとの炭素・窒素安定同位体比の回転率と分別係数を推定した。

現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

安定同位体比による水温推定法に技術的困難さがあり、その測定手法開発が遅れているため。

今後の研究の推進方策

１）安定同位体比による餌履歴の推定に関しては、カバーする年代を延ばすように分析数を増やす。２）安定同位体比による水温推定法に関しては、鱗以外の部位も含めたり、サンプル量を増やすことにより測定手法を確立することを目指す。３）北太平洋の水温と安定同位体比の相関を検討する。４）鱗による成長の推定結果と安定同位体比分析結果とを対比させる。以上より、シロザケ安定同位体比の経年変化を、環境要因としての水温や餌履歴と対応づけて解析を行い、東北地方のシロザケの回帰率低下との関連を検討する。