研究課題
基盤研究(C)
シラスウナギの漁獲量は年変動が大きく、海洋環境の変化が原因の1つと考えられている。そこで本研究は、シラスウナギ接岸量の変動メカニズムを解明するために、まず(1)ニホンウナギ(Anguilla japonica)を含む計5種のウナギ属魚類が接岸するフィリピン・ルソン島のカガヤン川河口で接岸状況を調査し、さらに(2)各種の初期生活史の違いを明らかにする。続いて、(3)東アジア各国におけるニホンウナギの接岸量と海洋環境データを併せて解析することにより、シラスウナギ接岸量を決める要因を特定することを目的とした。2009年1月にカガヤン河河口で採集したニホンウナギ12個体について、耳石による初期生活史推定を行った。その結果、レプトセファルス期は平均110.4 ± 20.8日(範囲:77 - 146日)、接岸日齢は147.2 ± 21.3日(111 - 185日)であり、2008年7月から10月に孵化したものと推定された。また、カガヤン川河口において2013年4月から2014年2月までの新月に接岸したシラスウナギの標本を得た。これらを形態的特徴から長鰭型(ニホンウナギ,オオウナギA. maromorata,セレベスウナギA. celebesensis,ルソンウナギA. luzonensis)と短鰭型(バイカラウナギA. bicolor)に分けた。長鰭型に関しては、各月の標本から96個体をランダムに選び遺伝子を用いた種査定を行った。その結果、2013年4月~7月と10月はルソンウナギが卓越し、2013年8,9月と2013年11月~2014年2月はオオウナギが多数を占めた。ニホンウナギとセレベスウナギの2種は出現しなかった。今後、短鰭型を含めた詳細な種組成を明らかにするとともに、各種の初期生活史を比較することにより、シラスウナギ接岸量の変動要因の解明に寄与することができると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、大型台風が調査地であるフィリピン・ルソン島を直撃したにもかかわらず、通年に亘るシラスウナギ標本を得ることができた。各月の種組成についても予備的な結果を得ている。
2014年度も引き続きカガヤン川河口でのシラスウナギの採集を行う。また、得られたシラスウナギについて耳石を用いた初期生活史推定を開始する。
2013年夏に調査地を大型の台風が襲ったため、標本の入手が遅れた。そのため、予定していた実験用消耗品の一部について購入を次年度に回した。繰り越した助成金は、翌年度請求分と合わせて実験用消耗品の購入に充てる。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)
PLOS ONE
巻: 9 ページ: 1996-2004
10.1371/journal.pone.0088759
ZOOLOGICAL STUDIES
巻: 53 ページ: 1-6
10.1186/1810-522X-53-13