研究課題/領域番号 |
25450294
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
玄 浩一郎 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (80372051)
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研究分担者 |
風藤 行紀 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (60399996)
馬久地 みゆき 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (40594007)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 繁殖生理 / クロマグロ / 初回成熟 / 成熟誘導遺伝子 / 卵巣 / 水産増養殖 |
研究実績の概要 |
本研究は、クロマグロの初回成熟魚における成熟特性を明らかにするために、(1)クロマグロ卵巣における成熟誘導遺伝子群の体系的な収集ならびに、(2)初回成熟魚ならびに経産卵魚の成熟誘導遺伝子等の発現と上位ホルモンに対する応答性の解明を目的としている。平成26年度研究成果は以下の通りである。(1)既知の遺伝子情報やクロマグロの全ゲノム情報を用いることで、クロマグロ卵巣から成熟誘導因子をコードする遺伝子27個(activin beta B、activin receptor type II、androgen receptor等)を単離した。さらに、単離した一部の遺伝子については、塩基配列情報をもとに遺伝子の定量系の開発を行った。(2)奄美大島で養殖された雌4歳魚の群成熟率や成熟期における血中雌性ホルモン量の動態を解析し、これら結果を3歳魚のものと比較検討した。その結果、卵黄形成期から産卵期において3歳魚は約40%の個体が成熟していたのに対して、4歳魚では全ての個体が成熟することが明らかとなった。さらに、estradiol-17beta、estroneならびにestriolの血中量は卵黄形成期に高値を示したが、その値はいずれも初回産卵魚(3歳魚)と比べて有意に高いことがわかった。また、3歳魚ならびに4歳魚の成熟誘導遺伝子の解析から、follistatin-related proteinやa disintegrin and metalloproteinaseの遺伝子発現が3歳魚で高い値を示すことが判明した。以上の結果より、経産卵魚(4歳魚)と比較して初回成熟魚(3歳魚)では群成熟率や血中雌性ホルモン量等が低いこと、また一部の成熟誘導遺伝子の発現が両者で異なることが明らかとなり、初回産卵魚では成熟に関わる制御機構が経産卵魚と大きく異なる可能性が示唆された。併せて、昨年度開発した卵巣片の生体外培養系を用いて、血中雌性ホルモン量を指標とした上位ホルモン(GtH)の応答性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
引き続きクロマグロの卵巣から成熟誘導因子をコードする遺伝子の単離を行うことで、前年度の結果と併せて計50種類の遺伝子を収集するに至った。また、3歳魚ならびに4歳魚の比較解析から、群成熟率、血中雌ステロイドホルモン量ならびに一部の成熟誘導因子の遺伝子発現が両者間で異なることを明らかにした。さらに、生体外培養系によって、血中雌性ホルモン量を指標とした上位ホルモン(生殖腺刺激ホルモン:GtH)の応答性を明らかにする等、当該年度においては当初の計画通り研究は順調に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き単離した成熟誘導遺伝子の定量系の開発を行い、3歳魚(初回成熟魚)ならびに4歳魚(経産卵魚)の卵巣における当該遺伝子の発現を明らかにする。併せて、成熟段階の異なる卵巣を用いた初代培養系によって、上位ホルモン(GtH)に対する成熟誘導遺伝子の応答性を解析する。さらに、これまでの解析から得られた知見を多角的に比較解析することで、養殖クロマグロの初回成熟魚における生物学的特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入について、節約に努めたため、予定購入金額より実支出額が下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、クロマグロ卵巣片を用いた生体外培養実験を行うため、培養に用いる試薬や消耗品等に使用する予定である。
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