研究課題/領域番号 |
25450295
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
黒川 忠英 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, その他 (50372032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サクラマス / マイクロサテライトマーカー / Y染色体特異マーカー / 偽雄 |
研究実績の概要 |
平成25年度に採卵に用いた、宮城県内水面試験場継代三陸産サクラマス親魚(雌160尾、雄48尾)のヒレサンプルからDNA抽出を行ない、15種類のDNAマーカーで本個体群内に多型があることが確認され、親子判別に使用可能であることが分かった。宮城県内水面試験場と民間養殖場で、稚魚の飼育を継続した。宮城県内水面試験場に残した一部の稚魚を偽雄化するために、雄性ホルモン処理を次のように行った。まず、孵化稚魚にメチルテストステロン10ppm溶液に2時間ずつの浸漬を週2回行ったのち、餌100gあたり10ngのメチルテストステロンを含む配合飼料を60日間給餌した。その後、稚魚にタグを打って個体識別が可能な大きさになった段階でヒレの一部を採取し、雌雄判別マーカーのOtY2マーカーを用いて、遺伝的な雌(XX)個体を選別した。一方、民間養殖業者において飼育中の稚魚の0才秋における相分化を調べた結果、雌の66.7%がスモルトであったのに対し、雄の81.8%はパー型で成熟して海面養殖用種苗としては不適であった。全体としてはスモルトは約35%にとどまり、三陸産のサクラマス系統を海面養殖に活用するためには、まず全雌化することが不可欠であることが明らかになった。そこで計画を変更して、海面養殖試験は延期し、0才秋にスモルトであったものを残し、親魚候補として飼育を継続して全雌集団の作成を先行させることとした。また、副次的成果として、今回サクラマス用に作製したDNAマーカーのなかに、ギンザケと共通しかつサイズの異なるDNAマーカーが得られ、このマーカーを東日本大震災津波により流出した養殖ギンザケが河川遡上してサクラマスと交雑した可能性の有無の調査に活用し、Sasaki et al.(2014)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作成した三陸産サクラマスの稚魚を民間養魚場で飼育した結果、雄の8割以上が海面養殖用種苗としては使用できないパー型での成熟をしたことから、まず全雌集団化を先行させる必要があることが明らかになり、計画変更を行う事とした。
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今後の研究の推進方策 |
稚魚の性分化時期に雄性ホルモン処理を行った群の飼育を継続し、成熟した個体の遺伝的性を再チェックして、成熟した偽雄を選別する。この偽雄の精子を用いて交配し、全雌集団を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
生産した種苗を用いて海面養殖試験を実施する予定であったが、このサクラマス集団では雄のスモルト化率が非常に低いことが判り、まず全雌集団にする事を優先することに計画変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
サクラマスの全雌種苗生産のための、偽雄判定用Y染色体特異マーカーによる成熟雄の遺伝的雌個体の選別に必要な試薬および消耗品費と、親魚の養成経費として使用予定。
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