研究実績の概要 |
昨年度,秋季に大型スモルトであった個体の飼育を継続し,成熟した個体から採卵を行った。189尾の雌から合計97,000粒を採卵し,一昨年度性転換して本年度成熟した偽雄4尾を用いて受精卵を得た。しかし,使用した偽雄の遺伝的性を再確認したところ,いずれもY染色体マーカー陽性であり,一昨年度の性転換が失敗していたことが明らかとなった(使用したホルモン剤の失活と考えられた)。そのため,通常の雄雌を含む集団しか作製できなかった。そこで,再度偽雄作製のため一部の孵化稚魚について,雄性ホルモンによる性転換処理を実施した(孵化稚魚にメチルテストステロン10ppm溶液に2時間ずつの浸漬を週2回行ったのち、餌100gあたり10ngのメチルテストステロンを含む配合飼料を60日間給餌)。秋スモルト選抜群と無選抜群の飼育を開始し,8月12日時点での成長は,平均尾叉長(選抜群11.7cm,無選抜群11.5cm)平均体重(選抜群20.7g,無選抜群20.1g)で,やや選抜群が大きかったものの,有意差は認められなかった。この時点ではスモルトの出現はまだ見られなかった。しかし,9月に入り斃死が目立ち始めたため魚病検査を実施したところ,細菌性腎臓病(BKD) に罹患していることが明らかとなり,他の飼育魚への魚病の蔓延を防止するため,全数処分せざるを得ず,試験全体の継続が不可能となった。副次的成果として,本研究で得られたサクラマス用のDNAマーカーを用い,東日本大震災で大量に散逸した三陸沿岸の養殖ギンザケとの交雑の可能性についての継続調査結果を,Sasaki et al.,(2015)発表した。
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