研究課題/領域番号 |
25450298
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
加藤 早苗 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80291061)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘモシアニン / 酸素運搬 / タンパク質 / 立体構造 / サブユニット / 解離 / 会合体 |
研究実績の概要 |
1. スルメイカおよびミズダコヘモシアニン分子の電子顕微鏡観察:血リンパ液中のヘモシアニン分子を透過型電子顕微鏡で観察した。両分子ともにシリンダー状の分子で、分子形状(直径と高さの比)から、10個のサブユニットが会合して分子を構成していると考えられること、が明らかとなった。しかし、イメージプロセッシングによる両分子の二次元平均画像解析を行ったところ、分子表面の構造に違いが認められ、分子のアーキテクチャーが異なることが示唆された。 2. スルメイカおよびミズダコヘモシアニンのサブユニット解離誘導因子の同定:ヘモシアニン溶液の組成を変えたところ、スルメイカヘモシアニンはニ価カチオンの種類によってはシリンダー状の分子構造が壊れ、サブユニットに解離することがわかった。分子の解離を経時的に追跡すると、サブユニットダイマーを経てサブユニットモノマーへ完全解離することがわかった。一方、ミズダコヘモシアニンの場合は、ニ価カチオンの種類に関わらずシリンダー状のヘモシアニン分子が観察された。この結果から、両分子のサブユニット解離誘導因子は異なることが明らかになった。これまで、軟体動物ヘモシアニンはニ価カチオン存在下で分子構造が安定化するものと考えられてきたので、本結果は新しい知見である。 3. 解離したスルメイカヘモシアニンサブユニットの再会合能:2.で明らかにした解離誘導因子によって解離したサブユニットをゲルろ過を用いて精製した。得られたサブユニットを、分子構造を保持したニ価カチオンを含む溶液に透析したところ、再会合してシリンダー状の分子を形成した。また、血リンパ液に解離誘導因子を添加してインキュベートした後に透析で解離誘導因子を除いたところ、解離したサブユニットの再会合を認めた。このため、2.で明らかにした解離誘導因子の作用は可逆的であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画で目的をしていた、スルメイカヘモシアニンのサブユニットへの解離を引き起こす、解離誘導因子の同定に成功し、対照としてミズダコヘモシアニンとの電顕分子像の比較および解離誘導因子の違いについて比較検討することができた。また、解離誘導因子の作用機作についても検討実施した。
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今後の研究の推進方策 |
サブユニットの解離がヘモシアニンの生理機能(酸素結合能、PO活性)に及ぼす影響 を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文原稿の英文添削を予定していたが、次年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
投稿論文原稿の英文添削料および論文投稿料として使用する計画である。
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