本研究課題では、自己溶菌などユニークな特性を有する新種の糸状性シアノバクテリア藻 (藍藻、原核光合成微生物)であるLimnothrix/ Pseudanabaena ABRG5-3株の分子遺伝情報の基盤を構築することを目的とした。 当初の研究計画に基づき、まずABRG5-3株をBG11液体培地で培養後、定常期にある細胞を集菌し、これより全DNA (染色体DNA + 内在性のplasmid DNA) を抽出・精製した。それを試料として、断片化した全DNAの末端にアダプター配列を連結させ、Bridge PCR法でクラスターを作製し、そこにDNAポリメラーゼと蛍光標識した塩基を加え、一塩基ずつゲノム塩基配列を解読していった。その後、配列のアセンブルを行い、Contigを作製しながら、ドラフトシーケンス情報を収集した。このようにして得られた塩基配列情報をもとにして、遺伝子のアノテーションを行なった。その結果、ABRG5-3株がこれまでに知られているシアノバクテリアとは異なり、独自の分子遺伝情報を有していることが示唆された。特に、本株の特性を左右すると思われる重要な遺伝子群(研究計画書参照)を最優先にして分析したところ、転写調節遺伝子などに顕著な特徴が発見された。一方、ABRG5-3株の染色体DNA以外にも、内在性のplasmid DNAと考えられるContigの情報を取得することにも成功した。これら非常にユニークな分子遺伝情報を有する新奇溶菌藻の全体像解明に向け、今後も引き続き遺伝情報分析を重ね、その成果を論文、学会、ホームページなどを通じて公表してゆく所存である。
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