研究課題/領域番号 |
25450302
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大迫 一史 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (00452045)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゼラチン / コラーゲン / 魚鱗 |
研究概要 |
平成25年度は、マアジ鱗由来コラーゲンの生化学的な特性を解明した。日本およびベトナムで漁獲されたエソ,マアジ,日本で漁獲されたボラ,トビウオ,およびキダイ鱗から抽出した酸可溶性コラーゲンの性状について検討した。酸可溶性コラーゲンの歩留まりは,魚種により異なるが,乾物ベースで0.43-1.5%であり,国産マアジの歩留まりは1.5%,ベトナム産マアジのそれは0.6%であった。マアジを含むいずれの魚鱗の酸可溶性コラーゲンもI型コラーゲンであり,α1鎖,α2鎖,およびβ成分から構成されていた。酸可溶性コラーゲン構成アミノ酸においては,魚種に関わらず,グリシンが最も多く,全体の33.2%から33.4%を占めた。また,アラニン,プロリン,グルタミン酸およびハイドロキシプロリンも多く含み,他の魚類コラーゲンと同様であった。ベトナム産マアジと国産マアジのアミノ酸組成を比較したところ,ベトナム産のものは国産のものに比較して多量のイミノ酸を含んだ。酸可溶性コラーゲンの変性温度は魚種により異なり,26℃から29℃の間にあったが,国産マアジのそれは26.1℃,ベトナム産マアジのそれは28.1℃であり,イミノ酸含量を反映した。また,いずれのコラーゲンもpH1-3の範囲で可溶化した。0.4M以下の塩濃度では,溶解性は急激に低下した。同じマアジ鱗で国産のものがベトナム産に比較して低いイミノ酸含量と低い融点を示したが,このことは棲息温度が関係しているものと思われた。加えて,マアジに関わらず,魚鱗は哺乳類由来のコラーゲンに代替可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展している。昨年度の研究成果は学会誌に投稿し、印刷された。L. Thuy, E. Okazaki, K. Osako, Isolation and characterization of acid-soluble collagen from the scales of marine fishes from Japan and Vietnam.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では高収率でフィルム形成に適した抽出条件を明らかにする。 これまでの大きな問題点となっている高収率でフィルム形成に適した抽出条件を明らかにする。これまでの申請者の研究から、高温で長時間抽出すれば、高収率で魚鱗からゼラチンを得ることができるが、得られたゼラチンのSDS-PAGE像を見ると、ゼラチン構成タンパク質は全体的に低分子化しており、これからフィルムを調製しても用途が乏しい脆弱なフィルムしか得られないことがわかっている。一方で低温下で短時間抽出したゼラチンはコラーゲンと似た分子量分布を有し、これから調製したフィルムは非常に強靭であるが、魚鱗からのゼラチン収率が非常に低い。この原因として、魚鱗が含むハイドロキシルアパタイトが強靭で、水が魚鱗内に浸透しにくいことが想定される。よって、本研究においては、塩酸および水酸化ナトリウムなどを用いて一定量のヒドロキシルアパタイトを除去後、水分が魚鱗内に浸透してから熱水抽出を行えばクリアできるものと考えている。そのため、前処理として魚鱗を浸漬・洗浄する塩酸の濃度、その後、コラーゲン以外のタンパク質を除去するための水酸化ナトリウムの濃度について、魚鱗中のコラーゲンが低分子化しないかを確認しながら決定する。次に、これの熱水抽出条件(加熱温度、加熱時間)を決定する。このようにして抽出したゼラチンからフィルムを調製し、これの引っ張り強度および引っ張り伸び率の測定などの機械的性質、SDS-PAGE解析、水分透過性、酸素透過性、UVバリア性などについて、これまで知見を有する他の原料由来のフィルムと比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では「平成25年度は、マアジ鱗由来コラーゲンの生化学的な特性を解明する。すなわち、これの融点、融解熱量、構成アミノ酸組成といった基本的な情報を得、これをフィルム形成特性が明らかにされているサメ皮コラーゲンなどと比較する。また、これらの研究はあまり時間を要さないことが想定されるため、早期に終了した場合は、平成26年度の予定の課題に取り組む。」としており、早期に終了して平成26年度予定の課題に取り組むべく予算を計上していたが、実際は平成26年度予定の課題に取り組まなかったため、残が生じた。 平成26年度中に執行予定。
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