研究課題
二枚貝綱ムラサキイガイから得られた糖鎖結合性タンパク質、MytiLecレクチンの一次構造は、他と類似性がなく、バーキットリンパ腫細胞の表面に発現し他Gb3糖鎖をパートナーとして結合し、細胞死を起こした。レクチンと糖鎖を介した細胞増殖制御の仕組みを明らかにするため、MytiLecの立体構造を明らかにし、以下の水圏生命科学と糖鎖生物学上の有意義な成果を得た。MytiLecの立体は植物毒素のリシンB鎖(R-型レクチン)に代表されるb-トレフォイル(三つ葉)構造に属した。ポリペプチド鎖内に3ヶ所ある糖鎖結合サブドメインには、全て糖鎖が結合し、2個のポリペプチド鎖が非共有結合した二量体分子であることが解明された。新規な一次構造を持つにもかかわらず、既知の立体構造を有した結果より、R-型レクチンは遺伝子の収れんにより造られ、その骨格となるb-トレフォイル構造は、生物の機能に大変重要な働きを持つことが推察された。MytiLecは既知のR-型レクチンにみられる共通配列を有さなかった。その理由は、R-型レクチンの遺伝子を持たずに進化したムラサキイガイの祖先が、進化の途上でレクチンを必要とする事態が起こり、その際にb-トレフォイルの祖先型遺伝子を改変して現在のMytiLecを創り上げたと仮説した。上記の仮説により新種のR-型レクチンが発見された理由は、水圏生命が多様な環境に順応して生きる必要があったことによると考えた。
1: 当初の計画以上に進展している
MytiLecの立体構造が決定でき、アミノ酸配列の比較だけでは知られない三次元構造の収れん進化を軟体動物レクチンに見出せた。この結果は、本分子の抗腫瘍細胞活性を理解する糖鎖生物学上の有力な手がかりを与えられた。b-トレフォイル構造がどのようにして細胞増殖に関する情報伝達を活性化するかの新しい課題を呈することにつながった。
1)MytiLecにb-トレフォイル構造のあることが判明した結果から、細胞内のどこへ運ばれるか、リシンB-鎖のそれと比較して、研究を深化させる。2)溶液中で二量体形成をしていたことが判明し、非共有結合に必須なアミノ酸を改変して単量体MytiLecを作出する。その細胞死活性を調べ、糖鎖へのレクチンの結合価数が細胞死にどう影響するかを明らかにする。3)MytiLecは顕著な細胞死活性を有する特徴的なレクチンであることが明らかになった。その詳細な仕組みを解析することは、海洋動物レクチンを用いたがん細胞研究の進歩に役立つ。MytiLecを腫瘍細胞に与え、細胞内で活性化または抑制的に働く分子を特定して、MytiLecの細胞死の誘導経路を解明する。
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